2022 Fiscal Year Research-status Report
がん関連疲労に対する糖類の有用性とがん増殖能への影響
Project/Area Number |
19K11800
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
吉澤 一巳 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (00711532)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ラフィノース / 腸内細菌叢 / 短鎖脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、腫瘍自身あるいはがん治療(抗がん剤)により誘発される疲労様行動に対する栄養療法の有用性を検討することである。昨年度までにオリゴ糖の一つであるラフィノースの投与により腫瘍誘発疲労と抗がん剤誘発疲労のいずれも改善されることが明らかとなった。そこで今年度はラフィノースの抗疲労作用のメカニズム解明を目的に検討を行った。 実験には、マウス大腸癌由来細胞株(C26)を BALB/c 雄性マウスの尾静脈に投与した大腸癌肺転移モデルマウスを用いた。昨年度までの研究により、このがん転移モデルマウスの易疲労性には肝グリコーゲン量と血糖値の低下が要因の一部であることを見出している。一方、ラフィノースを5 %含有した飼料をがん転移モデルマウスに摂取させたところ、低下した肝グリコーゲン量と血糖値がいずれも改善していた。しかし、ラフィノースを構成するグルコース、フルクトースおよびガラクトースを合計 5 %含有する飼料の摂取ではがん転移モデルマウスの疲労様行動は改善されず、肝グリコーゲン量と血糖値の低下も改善されなかった。このことから、ラフィノース構成糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース)ではなく、ラフィノース自身による腸内細菌叢の変化が抗疲労作用につながったものと考えられた。そこで、ラフィノース摂取後のがん転移モデルマウスの盲腸内容物を採取し、腸内細菌叢解析および短鎖脂肪酸分析を行った。その結果、ラフィノースの摂取によって短鎖脂肪酸産生菌として知られているバクテロイデス属、プレボテラ属、ルミノコッカス属が増加していた。また、短鎖脂肪酸解析の結果、ラフィノースの摂取によりプロピオン酸と酪酸の産生量が増加していた。プロピオン酸は肝臓で糖新生や脂肪酸合成の基質として利用されるため、ラフィノースの抗疲労作用にはプロピオン酸産生と糖新生が一部関与するものと推察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度と同じく、コロナ禍の影響で研究環境が制限される状況は続いたが、ある程度は計画通りに研究を進めることができたと考える。担がんモデルマウスを用いることで本研究の目的である腫瘍成長に影響を及ぼさずに疲労改善を認める栄養成分を探索することが可能となった。引き続きラフィノース以外の栄養成分を用いて抗疲労作用と抗腫瘍作用の両面から検討を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、最終年度となる。担がんモデルマウスのエネルギー代謝や腸内細菌叢の変化に焦点を当てた疲労のメカニズム解析とラフィノース以外のオリゴ糖でも抗疲労作用が期待できるのかについて検証するつもりである。
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