2023 Fiscal Year Annual Research Report
がん関連疲労に対する糖類の有用性とがん増殖能への影響
Project/Area Number |
19K11800
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
吉澤 一巳 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (00711532)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 難消化性オリゴ糖 / がん関連疲労 / カフェイン / コーヒー豆マンノオリゴ糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、腫瘍自身あるいはがん治療(抗がん剤)により誘発される疲労様行動に対する栄養療法の有用性を検討することである。昨年度までにオリゴ糖の一つであるラフィノースの投与が疲労改善作用を持つことを明らかにし、そのメカニズムとして難消化性オリゴ糖の特徴である腸内細菌叢の変化による短鎖脂肪酸産生菌の増加が一部関与していることを見出した。そこで今年度は、ラフィノース以外のオリゴ糖としてコーヒー豆マンノオリゴ糖(MOS)でも同様の抗疲労作用について検討を行った。さらに、一般的に抗疲労物質として汎用されるカフェインの抗疲労作用との比較検討を行った。 実験には、マウス大腸癌由来細胞株(C26)を BALB/c 雄性マウスの尾静脈に投与した大腸癌肺転移モデルマウスを用いた。MOS を 5 %含有した飼料をがん転移モデルマウスに摂取させたところ、ラフィノースと同様に疲労様行動の改善が認められた。また、疲労のバイオマーカーとなる血糖値、乳酸値、さらには肝グリコーゲン量のいずれも改善が認められた。そこで、MOS 摂取後のがん転移モデルマウスの盲腸内容物を採取し、腸内細菌叢解析および短鎖脂肪酸分析を行ったところ、短鎖脂肪酸酸生菌であるバクテロイデス属、マルビンブリアンチア属、バルネシエラ属の菌が増加し、プロピオン酸の産生量が有意に増加した。一方、カフェインを 0.05 %含有した飼料でもがん転移モデルマウスの疲労様行動は改善したが、低下した肝グリコーゲン量のさらなる低下が認められた。以上のことから、カフェインの疲労改善作用には、さらなる栄養源の消費が関与するため反跳性疲労が懸念される。それに対して、難消化性オリゴ糖の MOS は、短鎖脂肪酸の産生能を高めることで疲労改善作用を示したことから、カフェインよりも有用ながん関連疲労改善薬となりうる可能性が明らかとなった。
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