2020 Fiscal Year Research-status Report
腸管膜腸液・粘液分泌が関わる排便機構の解明:遺伝要因を考慮した便秘の分類と改善
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19K11804
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Research Institution | Jin-ai University |
Principal Investigator |
浦本 裕美 仁愛大学, 人間生活学部, 教授 (50390696)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 便秘 / CFTR機能 / 汗中クロライド濃度 / ゲニステイン摂取量 / 食物繊維摂取量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、汗中塩分濃度を指標としてCFTRクロライドイオンチャネル(以下、CFTR)機能を調べ、塩分濃度が高い群をCFTR機能低下群(低下群)、低い群をCFTR機能正常群(正常群)とし、日常生活に関するアンケートへの回答、及び、栄養素摂取量調査から得た便秘改善効果がある成分の摂取量から、それぞれ改善行動・悪化行動に分け、クロス集計とχ2検定を行い、便秘発症を抑制している要因を調べた(第67回日本栄養改善学会 誌上開催2020年9月)。しかし、便秘・非便秘の分類法は、基本的にはROME3の方法に順じ、一部改変し分類を行ってきているが、検討が必要であると考えている。そこで2020年度は便秘・非便秘の分類法について検討を加えた。 CFTRは腸管での水分分泌にかかわっていることから、その点を重視し、便の硬さについては、最近3か月間で少しでも硬い便が認められたら便秘症状としてカウントし、その他の項目については、50%の頻度で症状がみられたらカウントすると決め、6項目中3項目に症状があった場合を便秘群、それ以外を非便秘群として解析すると次の結果が得られた。 CFTR活性化作用のある食品中成分のゲニステインの摂取量が多いと便秘の発症を抑制する傾向にあり、特に低下群で顕著で、ゲニステインの主な給源は、とうふ・揚げ、納豆であった。また、一般に便秘改善効果があると考えられている食物繊維摂取量は低下群で改善傾向があり、正常群では改善効果がみとめられなかった。この結果は、先行研究のヒト摂取実験の結果と一致しており、この便秘・非便秘の分類法は、本研究において適切であると考えられた。また、ゲニステイン摂取量を見ると正常群と低下群の両群での非便秘群で摂取量が多く、便秘抑制に関与していることが示唆され、日常的なゲニステイン摂取量で便秘発症を抑制できる可能性が窺われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナの影響で被検者に調査等を依頼することができず、予定していた内容を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度実施予定の内容を実施する。昨年度の報告書でも記したが、当初予定したヒトにおける摂取実験は、臨床研究法が施行されたことにより、実施不可能となったので、次のように進める予定である。 便秘改善に向けた指導教室を開催(オンライン:被検者に便秘についての知識を提供し、かつ、本研究の研究結果の一部を説明し、生活行動の改変を促す。)し、その前後でアンケート調査を実施し、2020年度に検討した便秘・非便秘の分類に基づき解析を行う。汗の塩分濃度は2019年度に測定した値を使う。よって、2019年度に協力してもらった被検者に再び依頼をし、承諾が得られた人を被検者とする。 また、ヒトで摂取実験ができない分を動物実験で補っていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で予定していた内容の研究を遂行することができず、今年度はこれまで得ているデータの集計の見直し等の検討・整理を行ったため。 R3年度は、R2年度実施予定の内容を進める予定で、また、これまで得た結果に基づいて動物実験での摂取実験も検討している。
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