2022 Fiscal Year Research-status Report
腸管膜腸液・粘液分泌が関わる排便機構の解明:遺伝要因を考慮した便秘の分類と改善
Project/Area Number |
19K11804
|
Research Institution | Jin-ai University |
Principal Investigator |
浦本 裕美 仁愛大学, 人間生活学部, 教授 (50390696)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | CFTR / 便秘 / マウス / CFTRinh172 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトでの研究が困難になったため、上記テーマの解明に向けて動物実験によりCFTR機能低下便秘モデルマウス作成の検討を行った。即ち、腸管膜に発現しているCFTRの機能を阻害することで便秘を誘導できるのかを、CFTR特異的阻害剤であるCFTRinh172をマウスに経口投与し確認した。 阻害剤投与群の1日当たりの平均摂薬量は24.68μgであった。阻害剤投与群の体重変化と解剖時の肝臓重量をコントロール群と較べると違いはなく、本実験での投与量および投与期間では、CFTR阻害剤の摂取は、マウスの成長や健康に影響を与えなかったと考えられた。 乾燥糞量は阻害剤投与の影響はなく、ペレット数は阻害剤投与により数は減ったが、有意差は認められなかった。糞水分量は、阻害剤投与1週間経過後の約1週間の観察で漸減傾向を示し、また、コントロール食に切替えるとすみやかに水分量は増え、回復期間5日目でコントロールマウスの結果とほぼ同じレベルであることから、5日目で回復は平衡状態に達していたと考えられた。阻害剤投与13日目と15日目は回復期5日目に較べ糞水分率は少なく、13日目で有意に少なかった(p<0.05)。 阻害剤投与の腸内糞通過時間への影響を阻害剤投与8日目で観察した結果、コントロール群では色素投与から完全に糞の着色が無くなるまでに約24時間かかったのに対し、阻害剤投与群では26~30時間かかっており、腸内糞通過時間の遅延が確認できた。コントロール食に切替えたタイミングでの結果は、コントロール群と阻害剤投与群で差はなく、阻害剤投与を止めることですみやかにコントロール群と同等にまで回復することがわかった。 以上から、マウスにおいて、CFTR阻害剤を毎日40μg(正味摂取量約20μg/日)を餌に加え約2週間投与することで便秘状態を誘導できると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトでの研究から動物での研究に切換え1年目で、準備に時間を要したことと、実験実施に必要な器具数(糞回収に必要な飼育ケージ等)の制約があり、十分に内容を深めることができなかった。しかし、期待どおりの結果が得られており、テーマに迫る内容にするには更なる実験を重ねることが必要と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度の実験により、CFTR特異的阻害剤(CFTRinh172)を餌に加え投与することで便秘を誘導できることがわかった。しかし、器具数の制約があり、1群の匹数を十分な数にすることができなかった。2023年度は論文にできるように1群の匹数を増やし、確かなデータにするとともに、これまでのヒトでの研究で得られた結果、すなわち、食物繊維の摂取など一般に便秘に良いと知られていることがCFTR機能低下による便秘でその影響がより顕著であることを、2022年度で得られたCFTR機能低下便秘マウスを用いて証明していく予定である。
|
Causes of Carryover |
2022年度は、動物実験の初年度であったため、必要な器具等を揃えるなどの準備に時間を要し、実験回数を十分に行うことができなかったため残額が生じた。 2023年度は、昨年度のデータを活かした内容で動物実験を引き続き行う予定である。マウス、飼料、試薬、腸内細菌の解析等に使用予定である。
|