2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K11805
|
Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
堂前 純子 中部大学, 応用生物学部, 教授 (70227700)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤内 要 中部大学, 応用生物学部, 教授 (50329851)
横山 信治 中部大学, 生物機能開発研究所, 客員教授 (10142192)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ABCタンパク質 / 脂質栄養 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ABCA1, ABCA7は高い相同性を示すABCタンパク質で、動脈硬化症とアルツハイマー病の疫学的な負のリスクと考えられている。両者が慢性炎症ならびに脂質栄養にどのように関与するかを明らかにするため、生体内での最強のステロール代謝制御因子であるオキシステロール に着目した実験を行い、以下の成果を得た。 オキシステロールの微量定量を可能とするため、重水素標識化合物を内部標準とし、誘導体化と液体クロマトグラフィー/質量分析法を用いる測定系を作成した。ステロール代謝に最も影響が大きい25-ヒドロキシコレステロール(25-HC)の血中濃度は、野生型マウスであれば血清50マイクロL以下で定量可能となった。これにより、ABCA1 KOマウスならびにABCA7 KOマウスではともに血中25-HC濃度が野生型マウスのレベルと異なっており、コレステロール濃度とは必ずしも相関していないことがわかった。なお、他のオキシステロール分子種でも誘導体化反応は同様に進むため、分子種毎の誘導体化効率に注意すれば25-HCより高濃度に存在する7α-HC, 24-HC, 27-HCとの同時測定系への改良は容易と考えられる。 野生型マウス、ABCA1 KOマウス、ABCA7 KOマウスの腸管内容物ならびに糞便解析から、同一飼料による飼育下でも、ABCA1, ABCA7発現の有無で腸内フローラパターンや胆汁酸排泄量が異なることが明らかとなり、これらのABCトランスポーターの変異は腸内細菌の生育に影響する胆汁酸の量や組成を変化させている可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の測定方式(誘導体化なし)では、測定に必要な血清量が多く同一マウス個体を用いての反復測定は不可能と判明したため、別方式での測定系構築を行う必要があった。他のオキシステロールと比べて濃度の低い25-HCの測定系を得ることで、ABCA1, ABCA7の遺伝子発現レベルや栄養状態による影響が解析可能となった。 遺伝子改変マウスでは、自然交配では妊娠の成立しづらい個体が一定割合で存在する。コロニー維持には体外授精と胚移植の組み合わせが効果的とわかった。遺伝子改変マウスからのマクロファージを安定的に得るために、個体から得た骨髄細胞を一旦凍結保存し、後日培養・分化させる方式の開発・改良を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
遺伝子改変マウスが有効に利用できるよう、25-HCならびに他のオキシステロール分子種の同時測定系の完成を急ぎ、個体レベルでのステロール・オキシステロールの動態はABCA1, ABCA7の発現レベルでどのように変わるかの確認を優先して行う。この時、脂肪代謝や炎症反応の状況の解析も同時に行う。可能であれば、食物・薬物投与による影響をみる実験を並行して行う。 マウスの繁殖が間に合わない時期には、培養細胞の実験を進めることとする。
|
Causes of Carryover |
マウス検体の採取が年度内に完了しなかったため。予定していた受託解析を取りやめ、翌年度の採取分と合わせて実施する計画としている。
|