2019 Fiscal Year Research-status Report
脂肪性肝疾患に対する消化管胆汁酸代謝制御を標的とした新たな食事性予防戦略
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19K11811
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
宮田 昌明 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (90239418)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NAFLD / taurine / bile acid / FGF15/19 / hypercholesterolemia / selenoneine |
Outline of Annual Research Achievements |
1%コレステロールと0.2%コール酸ナトリウムを添加したNMF飼料により高コレステロール血症を誘発させ、2%タウリン含有水摂取によるコレステロール低下作用の機序を解析した。胆汁酸をリガンドとする核内受容体farnesoid X receptor (FXR)の欠損マウスと野生型マウスを用い、FXRの関与について解析した。野生型マウスではタウリン群で肝内コレステロールの有意な低下と、肝臓Cyp7a1mRNAレベルの有意な増加が認められた。消化管管腔内の胆汁酸組成の解析により、FXRのアンタゴニストのtauro-beta-muricholic acidの有意な増加が認められ、FXR標的遺伝子のFgf15, Shp mRNAの有意な減少が認められた。一方Fxr欠損マウスにおいてもタウリン群で肝内コレステロールの有意な低下と、肝臓Cyp7a1mRNAレベルの有意な増加が認められたが、消化管管腔内の胆汁酸組成に有意な変動は認められなかった。タウリンにはFXR存在下、胆汁酸代謝を変化させることで消化管FXRシグナルを減弱させる作用があり、肝臓コレステロールの低下作用にはFXRが関与するものと、FXRシグナルが関与しないものの両方が存在することが示唆された。 さらに魚類に豊富に存在するセレン含有物質のセレノネインを0.3 ppm添加した飼料を4ヶ月間Fxr欠損マウスに摂取させることによりFxr欠損マウスの脂肪肝と肝細胞障害を軽減することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タウリンによるコレステロール低下作用にFXRが関与しない機序が存在することが明らかになるとともに、FXR存在下では胆汁酸代謝に影響を与えて消化管のFXRシグナルを減弱させる可能性が示されたことより、一定の成果をあげることが出来た。 またセレノネインが脂肪性肝疾患の改善に効果があることが明らかになり、この動物モデルでの胆汁酸動態と脂肪性肝疾患との関わりの解析も今後可能となった。一定の成果が出たことと研究の新たな展望も開けてきたことから本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はタウリンによるFXRが関与しないコレステロール低下作用と、消化管FXRシグナルの減弱が、コレステロール代謝、トリグリセリド代謝にどのように影響を与えるかについて、研究を実施する。前者についてはFxr欠損マウスを用いて、タウリン濃度を変化させて解析する。後者については消化管のFXR標的遺伝子であり、ホルモン様作用により肝臓に作用できる、FGF15/19に注目して解析を進める。さらにセレン含有物質のセレノネインがFxr欠損マウスの脂肪肝と肝細胞障害を軽減することが明らかになったため、これらの胆汁酸代謝についても解析し、セレノネインの脂質低下作用や肝障害改善作用が、胆汁酸代謝変動を介しているのか否かについても基礎検討を実施する。
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Causes of Carryover |
研究が予定より進行しそうであったので、20万円分研究費を前倒ししたが、結局予定した実験は実施できなかったため、当初の予算120万円とほぼ同額の使用となった。
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