2022 Fiscal Year Research-status Report
小型デバイス上でのデータ処理アルゴリズムの使用メモリ領域の効率化
Project/Area Number |
19K11820
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山上 智幸 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (80230324)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 線型領域仮説 / 弱線型メモリ領域 / 一様性有限オートマトン族 / 滝型論理回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は7つの査読付き国際会議論文が採択され Springer 社から出版された。その他に、2つの査読付き論文が Elsevier 社の専門雑誌に掲載された。これらの論文で得られた研究成果の幾つかを簡単に記述する。
対数領域計算量小型デバイスの数学的計算モデルを使い、デバイスの計算能力の分析を行った。こうした計算モデルの中でも特に、1970年代後半に提案された多項式状態数を持つ非一様性有限オートマトンの無限族モデル上の非決定性計算に着目し、初期状態から受理状態へ続く計算路が満たす条件の種類による計算量クラス間の新たな関係性を示すことで、相対的な計算能力を示した。 2021年に発表した、書き換え回数制限のあるメモリ専用の保管テープを有する、決定性オートマトンを非決定性に拡張した計算モデルを今回新たに導入した。更に滝型論理回路と呼ぶ論理回路を定義し、前述の非決定性オートマトンとの同等性を証明し、国際会議で口頭発表を行った。国際会議論文は後日 Springer 社より出版された。 「線形領域仮説」は、2017年に本研究者が提案した仮説で有り、2SAT3と呼ばれる充足可能な条件付き論理式の集合を多項式時間で認識するには、弱線形領域量では不十分であることを主張する。仮説の提案以降、既に5つの論文が出版されていて、その中の2つは2022年度中に国際会議で発表し、Springer社から論文が出版されている。その一つでは、2SAT3と同等の計算量を有する3つの新たな問題を提案し、2017年に導入された「短い還元性」の概念を用いて計算の複雑さの同等性を証明した。もう一つでは、細粒化時間計算量の研究の発展を模範として新たに細粒化領域量の概念を導入し、線形領域仮説の下で幾つかの決定問題の計算不可能性を証明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ研究は滞りなく順調に進捗している。コロナ禍も終息に向かう中、2022年後半に漸く国際会議への参加も可能となり、論文が採択された7つの国際会議の内3つで開催地での成果発表を行うことができた。2023年度は研究計画の集大成として、更に多くの国際会議での成果発表を目指している。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の収束が見えない状況で当初計画していた研究計画の執行ができず、2023年度までの期間延長を行なった。2023年5月のコロナ禍での規制の撤廃によって、2023年度内には全ての研究計画が執行可能になると予想され、研究全般の終了に向けて遅延なく進めていく予定である。アルゴリズムによる使用メモリ領域の効率化を目指す本研究のまとめとして、データの処理計算の形態の種類(非決定性、確率、量子計算など)によって、制限された領域計算量を有する計算能力の評価を行うと共に、その限界を明らかにする。特に、多項式状態計算量を有する有限オートマトンやプッシュダウンオートマトンの非一様性無限族を用いた計算モデルの研究を継続し、このモデル上での(決定性、非決定性、確率、量子)アルゴリズムの曖昧性と数え上げ能力の効率評価を行う。また、このモデルと線形領域仮説との関連性を明らかにする事で、この仮説の下での計算効率の限界の上界を示す。これらの結果は、小型デバイス上でのデータ処理の効率化の今後の指針となることが期待される。
|
Causes of Carryover |
長引くコロナ禍の影響により、当初計画していた研究計画の執行が完全にできず、次年度への研究継続を希望し、2023年度末までの期間延長を行なった。2022年度後半では、漸く国際会議への参加などが可能となったが、帰国前に現地でのコロナ陰性証明書の取得などの煩雑で時間の掛かる作業などが有り、最終的に渡航を断念したものもあった。こうした事が研究計画の遅延の要因となり、最終的に2023年度までの研究継続を申請することになった。2023年度では予算計画の確実な執行を予定している。
|