2020 Fiscal Year Research-status Report
外乱に対して安定な分散アルゴリズムの相互作用パターン
Project/Area Number |
19K11826
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
角川 裕次 龍谷大学, 先端理工学部, 教授 (80253110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増澤 利光 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50199692)
首藤 裕一 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (50643665)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分散アルゴリズム / 自律分散システム / プロセス同期 / 相互排除 / 自己安定 / IoT |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主に, 分散相互包含 (mutual inclusion) 問題に関する研究に取り組んだ. 分散相互包含問題とは, どの時点においても少なくともひとつのプロセスが何らかの特権的な動作を行うことを保証する, 分散システムにおけるプロセス同期問題である.
まず, リングネットワーク上での自己安定分散相互包含アルゴリズムを新たに設計した. 自己安定性とは分散システムの故障耐性に関する性質であり, メッセージ損失やメモリのビットバケが発生しても, 自律的に動作が正常に回復する性質である. アルゴリズムは, そのような自己安定性を持ち, 少なくとも1つ, 高々2つのプロセスが特権的な動作をすることを保証し, なおかつ特権的な動作をするプロセスが, 順次入れ替わる動作をする.
例えば特権的な動作の例として, センサでのモニタリングが挙げられる. 多数のプロセス (IoTノード) を自律分散的に動作させて, 常に少なくとも1つのプロセスが監視を行うというものである. プロセスの動作による電力消費を抑えるためには, 多数のプロセスが同時に動作をするのではなく, できるだけ少なくすることが重要であり, 動作していないプロセスは, その間に太陽電池などからバッテリに充電することができる. 今回のアルゴリズムはこの条件を満たすように設計している. 同時に2つのプロセスが動作する時間帯を設けているのは, 動作するプロセスが切り替わるときに, 一瞬でもモニタリングが途切れないことを保証するためである. 提案アルゴリズムは査読付きの国際会議に投稿し, 2021年5月に発表予定である. また, 提案アルゴリズムを 5台のRapsberry Pi それぞれにカメラを接続したネットワーク上で動作させる実装実験を行った. この結果については, 学会での発表に向けて準備を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて, 4月からの大学の全講義が急遽, オンラインで実施することになり, その対応に追われて研究時間はほとんど確保できなかった. 後期からは少し時間的な余裕が出てきたが, それでも全く十分ではなかった. また, 申請者が2019年度に国立大学から私立大学に異動になったこともあり, 本研究課題の申請時と比べて十分な研究時間が確保できなくなった点も挙げられる.
初年度の2019年度は, 自己安定性を有する分散アルゴリズムをいくつか提案できた. 2年目の2020年度は, 主に分散相互包含 (mutual inclusion) 問題に関する研究に取り組んだ. この問題は, 従来からよく研究されている相互排除 (mutual exclusion) と相補的な関係にあるプロセス同期問題である. 相互包含と相互排除の一般化問題は, 本研究課題の全期間を通じて研究をすすめる計画を立てており, アルゴリズムの設計が出来たので一定の成果は得ることができた. 当初2021年度に計画していた IoT デバイスでの実装評価は 2020年度に前倒しして着手を始めたが, まだ実験規模が小さく十分な知見が得られていないのが現状である.
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Strategy for Future Research Activity |
一旦は収束すると思われた新型コロナウイルスが, 2021年度は2020年度よりもさらに感染拡大すると予想され, 十分な研究時間を捻出することが困難になるかもしれない. 特に, IoT デバイスへの実装実験は, 大学の研究室への立ち入り制限等で実施が困難になると予想される. そこで2021年度で計画していた実装実験は2022年度に先送りをし, アルゴリズムの設計と検証に注力したい.
特に今後進めてゆく具体的な研究課題は以下のものである. まず, リングネットワーク上での相互排除・包含アルゴリズムで, 常に少なくとも1つ, 高々3つのプロセスが特権を持つように, 2021年度に提案したアルゴリズムの拡張を行う. そこでの知見を基に, リングネットワーク上で常に少なくともL, 高々K (ただし 1 <= L < K <= n で, L と K は任意の定数) のプロセスが特権を持つアルゴリズムへと更に拡張を試みる. それと並行して, 自己安定分散1支配集合問題に対するアルゴリズムの設計を行う. これは貪欲解の支配集合に対して, 局所的に改善が行われた解を求めるものであり, 分散システムにおける実行の効率の良さと解の良さをバランスが取られた問題設定である. これらに対して, 最終年度の2022年度に IoT 実装実験を行なうようスケジュール変更を考えている.
自己安定分散アルゴリズムは, ネットワーク内の各プロセスがいかなる不正な初期状況から, どのような動作順序で動作をしても, 必ず正しい状況に到達する事を保証しなければならないため, アルゴリズム設計は困難である. そこで, アルゴリズム理解と設計の補助となるツール, 特に可視化とステップ実行を実現する理解支援ソフトウエアの開発を進める予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により研究活動が大幅に停滞し,出張がほぼ不可能であった.特に海外出張ができなかったため,予算に大きな剰余が生じた.2021年度の後半には研究成果の発表と海外研究者との情報交換のために,国際会議参加の海外出張を行いたい.
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Research Products
(6 results)