2019 Fiscal Year Research-status Report
マルコフ連鎖における定常分布の不等式系に基づく数値計算法と待ち行列モデルへの応用
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19K11841
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
滝根 哲哉 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00216821)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マルコフ連鎖 / 条件付き定常分布 / 不等式系 / 数値計算法 / 待ち行列モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、可算無限集合上で定義されるマルコフ連鎖の条件付き定常分布に対する新たな数値計算法を開発し、従来の行列解析法が適用できない各種待ち行列モデルの性能評価へ応用することである。従来の研究とは異なり、本研究では、条件付き定常分布を線形不等式系の解として特徴づける、すなわち、N次元ベクトルとして与えられる条件付き定常分布を相対的内部に含む凸多面体を同定し、それに基づく数値計算法を開発する。さらに、開発した数値計算法を基礎として、従来の行列解析法では取り扱うことができなかった各種待ち行列モデルに対して、それらに固有の構造を活用した数値的解法を確立する。具体的な研究計画は、(1年目) 推移率行列を分割した際、北西角ならびにその直下(南西)に位置する行列が条件付き定常分布に関して持っている不等式系としての全情報の抽出 (2年目) 1年目の結果に基づく、一般、ならびに、従来の行列解析法では活用することができなかった構造をもつマルコフ連鎖における条件付き定常分布に対する数値計算法の確立 (3年目) 従来の行列解析法では扱うことが困難であった各種待ち行列モデルに対して、2年目に開発した数値計算法を特化することで得られる、新しい数値的解法の確立、である。初年度は計画通りに研究を行うことができた。すわなち、推移率行列の北西角を元に、条件付き定常分布を不等式系の解して特徴づけた。さらに、この凸多面体を張るベクトルを明示的に与え、確率的意味を明らかにした。続いて、冗長性を取り除いた凸多面体を導出し、包含関係を明らかにした。尚、これらの結果は論文にまとめ、投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績欄で述べたように、初年度は計画通りに研究が進んでいる。2年目の課題として挙げていた数値計算法の検討に着手しているが、計算量が問題となり、大規模な問題にも適用可能な汎用的アルゴリズムの構築は困難である可能性が高いことがわかってきたが、中規模の問題までであれば、誤差評価付きのアルゴリズムの構築は可能であるとの感触を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初計画通りに進めていく予定である。ただし、2年目は大規模問題にも適用可能な計算量が大幅に削減できる構造も並行して探っていき、3年目に繋げていく予定である。
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Causes of Carryover |
3月に予定していた複数の出張が取りやめになったこと、ならびに、1年目で購入を予定していたPCの発注が遅れたことが主な原因である。尚、1年目に購入予定であったPCの発注は既に済ませている。
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