2021 Fiscal Year Research-status Report
マルコフ連鎖における定常分布の不等式系に基づく数値計算法と待ち行列モデルへの応用
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19K11841
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
滝根 哲哉 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00216821)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マルコフ連鎖 / 条件付き定常分布 / 不等式系 / 数値計算法 / 待ち行列モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、可算無限集合上で定義されるマルコフ連鎖の条件付き定常分布に対する新たな数値計算法を開発し、従来の行列解析法が適用できない各種待ち行列モデルの性能評価へ応用することである。従来の研究とは異なり、本研究では、条件付き定常分布を線形不等式系の解として特徴づける、すなわち、N次元ベクトルとして与えられる条件付き定常分布を相対的内部に含む凸多面体を同定し、それに基づく数値計算法を開発する。さらに、開発した数値計算法を基礎として、従来の行列解析法では取り扱うことができなかった各種待ち行列モデルに対して、それらに固有の構造を活用した数値的解法を確立する。 今年度は、到着率と崩壊率が系内客数に依存する待ち行列モデルを取り上げ、前年までに確立した理論的成果を応用して、精度保証付きの系内客数分布に対する数値計算法を開発した。このモデルの特徴は、一様化手法が直接的には適用できないマルコフ連鎖でモデル化されるところにある。一方で、切断技法を用いた場合、対応する有限状態マルコフ連鎖が得られるが、数値計算結果の精度を保証するためには、切断によって失われた情報を利用しなければならない。この点について、どのように対処すればよいかということを具体的に示したところに今年度の研究の意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論的な検討を研究の中心に据えた2年目までは順調に進んできたが、各種待ち行列モデルへの応用へ進んだ3年目は、コロナ禍の影響に加え、計算機サーバの故障など予期せぬトラブルに見舞われ、十分な研究を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1年間の研究期間延長申請が認められたので、新しい計算機サーバを購入し、研究を進める予定である。また、2年目までに得られた理論的知見が活用可能なモデルは状態空間を適当な部分集合に分割した際、各部分集合のサイズがある程度の大きさまでに押さえられる場合に限られていることが明らかになりつつある、いわゆる状態爆発が起こるモデル群に対する接近法についても考察を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度も、依然として新型コロナウイルス感染症の影響によって出張が中止あるいはオンライン代替となり、旅費の支出減額が続いて次年度使用が発生した。これは、新しい計算機サーバーの購入費に充て、研究計画を遂行する。なお、研究期間の延長が認められた後、速やかにサーバの発注を行っており、6月には納品される予定である。
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