2021 Fiscal Year Research-status Report
セミパラメトリック関数推定に基づく統計解析の新たな展開
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19K11851
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
内藤 貫太 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (80304252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 喜平次 兵庫医療大学, 共通教育センター, 講師 (50631652)
玉谷 充 島根大学, 学術研究院理工学系, 助教 (80749846)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 関数推定 / ダイバージェンス / 局所化 / 漸近展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は交付申請書に記載の3つのサブテーマそれぞれでの実績が得られた。 1つ目はサブテーマ「様々な関数推定法の評価」に関連する。リスク最小化逐次アルゴリズムに基づくノンパラメトリック核型推定量の構成法を提案し、得られる推定量の非漸近的誤差限界を導出するとともに、実際的挙動に関して数値的にも検証を行った。 2つ目はサブテーマ「理論的拡張と深化」で得られた。伝統的な枠組みである一般化線形回帰モデルを考え、含まれるパラメータの推定を、狭義凸関数から構築される汎関数ブレグマン・ダイバージェンスで行う。特殊な場合として最小2乗法や最尤法を含んでいる。この広い設定の中で核関数を導入してパラメータを局所的に推定する。これを局所ブレグマン・ダイバージェンスと呼ぶ。ここでの重要な成果は、この局所化が役立つことを数理的に証明した点である。ダイバージェンスを生成する狭義凸関数と、一般化線形回帰モデルにおけるリンク関数がある種の関係性を満たすとき、局所的に得られたパラメータの推定量は、局所化を導入せずに得られる推定量のリスクを漸近的に改善することが証明された。 3つ目の成果は、「新たな応用の開拓」における成果で、損保数理における「関数推定」の精密化と言う形で得られた。損害保険会社の保険金支払額は事故などの大きさにより変化するため、保険会社は破産のリスクと隣り合わせである。そのため、保険会社の破産確率を理論的に評価することは重要である。ここでの研究は、資産過程のモデルとしてのクラメル・ルンドバーグモデルを考え、幾つかの設定の下で破産確率の漸近展開式を求め、その精度評価を行った。本研究では特に、保険金支払額がガンマ分布に従う場合を考え、スケーリングに基づく資産過程の破産確率の漸近展開式を導出することによって、拡散過程を用いた破産確率の近似の改良に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度においては、交付申請書に記載の3つのサブテーマに関する内容の実績が得られた。 サブテーマ「様々な関数推定法の評価」に関連するリスク最小化逐次アルゴリズムに基づくノンパラメトリック核型推定量の構成法に関する論文は、投稿済となっている。 サブテーマ「理論的拡張と深化」に関連して、局所ダイバージェンスに基づく回帰分析に関する理論について、論文が出版に至った。モデルと推測方法がどういう関係にある場合に推定量の漸近的改良が得られるのかを示した興味深い結果をまとめた論文である。 サブテーマ「新たな応用の開拓」に関連して、資産過程の破産確率の漸近展開に関する研究成果をまとめた論文が投稿済となっている。 このように2021年度では、1本の論文が出版され、2本の論文が投稿された。講演発表も適宜行われており、このような実績を鑑み“おおむね順調に進展している”と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
期間延長が認められ、更に1年の研究期間があるものの、交付申請書に記載した計画の変更は特に必要ないと判断する。研究計画に記載した3つのサブテーマの研究を引き続き推進する。 サブテーマ「新たな応用の開拓」では、2021年度から試行錯誤的に進めてきた、埋め込み1次元曲線の信頼領域に関する研究を進展させ、問題として明確なものにし、成果を追究していきたい。ノンパラメトリック関数推定手法が果敢に応用できる分野と言える。 サブテーマ「様々な関数推定法の評価」においては、2021年度から進めてきた、多変量空間ランクに基づくロバストな主成分分析に関する研究における成果を追究したい。特に、影響関数の導出によるロバスト性の考察、集中確率による漸近的性質の評価などを調べていきたいと考えている。 サブテーマ「理論的拡張と深化」では、2021年度に一定の成果を得た局所ダイバージェンスに基づく関数推定法の更なる理論的評価を追究したい。特に、ノンパラメトリック推測に近い設定の元でのこの方法の挙動について理論的考察を深めたい。 これら3つのサブテーマを俯瞰・統合して、研究課題「セミパラメトリック関数推定に基づく統計解析の新たな展開」の最終年度を総括する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由の1つ目は、2021年1月に豪州にて開催予定であった国際会議が、新型コロナウィルス感染拡大の影響で2022年1月に延期になっていたところ、それが更に1年延期となったためである。 2つ目は、研究成果の発表の機会と考えていた国内の学会・研究集会が軒並みオンライン開催となったためである。3つ目は海外の研究者との共同研究が、海外渡航ができないことから中止になったためである。このように、未使用額が生じた理由は、旅費の執行ができなかったことにつきる。このような理由から、本研究課題については1年の期間延長を申請し認められたところである。 延長期間での配分残額使用計画としては、海外渡航が可能となる状況となればであるが、2023年1月に延期された豪州開催の国際会議へ参加することとなっており、その旅費として利用することになる予定である。2022年9月にも豪州の研究者との共同研究が予定されており、渡航可能な状況であれば旅費の執行がされる予定である。
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