2019 Fiscal Year Research-status Report
時空間モデルに基づく水産資源解析手法の基盤確立に関する統計的研究
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19K11855
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
北門 利英 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40281000)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 時空間モデル / 空間分布 / 集団の混合 / 統計モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
水産資源の持続的かつ有効な利用のために,水産生物の資源量だけでなく,資源の時空間的な変化の様子も捉えようという動きがある.一般に,時空間的に変化する水産生物の分布を捉えることは水産資源の管理に役立つ.通常,漁業および調査などのプラットフォームから時空間的な情報を取得するが,水産生物の場合には直接観察することができず,また時空間的なカバレッジの制限もある他,海洋環境の影響により空間分布の変化だけでなく産卵量や生残率など様々な要因も変動をする.そこで本研究では,水産資源解析高度化のための時空間モデルの基盤確立と応用を目指し,次の2つの観点から研究を行う.(1) 高度回遊性の水産資源を対象に,生物の空間分布のパターンやその時間的変化を理解するための時空間交互作用を潜在変数とみなした階層型時空間統計モデリングとその推定法の開発を行うとともに,実例等を通してその有効性を検証する.(2) 上記で構築した単一個体群の時空間モデルを更に拡張するために,複数個体群の混合や棲み分けを表現する時空間統計モデルを構築する. 本年度の研究では,Gaussian Markov Random Field (GMRF)を取り入れた空間分布を状態モデルとし,そこに時空間的な分布の変化を表現するための時空間交互作用として潜在変数を挿入し,調査や漁業を通して得られる漁獲尾数の観測モデルと融合した階層型モデルの構築について検討した.この際,漁具を通して観察される漁獲尾数には大きさや年齢による選択(サイズバイアス)が生じるため,これを考慮した観測モデルの作成についても検討を行った.また,複数個体群の混合の時空間統計モデルを構築するために,遺伝情報を用いた階層型時空間モデルについて検討を行い,国際学会において発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では,(1)生物の空間分布のパターンやその時間的変化を表す階層型時空間統計モデリング,(2)複数個体群の混合や棲み分けを表現する時空間統計モデルを構築,いずれにおいてもほぼ順調に研究を行うことができた.また,(2)の研究については,その1項目である鯨類の複数の集団混合構造の時空間的な変化モデルについて,予定通り2019年12月に開催された海棲哺乳類の国際学会にて報告した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 生物の時空間分布モデルの構築では,サイズバイアスやMatern共分散行列の挿入による計算速度向上などについて理論的に検討するとともに,実際の漁業データ等への適用を通して実用性についても検証を行う予定である.また,(2) 複数個体群の混合や棲み分けを表現する時空間統計モデルを構築では, 前年度に行った時空間混合モデルにおけるロジスティック回帰構造を,より柔軟なモデル構造へと拡張する.また両研究において,ラプラス近似を用いた周辺尤度の近似計算法についてもプログラミングと併せて検討する.
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Causes of Carryover |
前年度の所要額においてわずかに残額が生じたため.次年度に関連書籍等の購入で使用予定.
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Research Products
(3 results)