2020 Fiscal Year Research-status Report
因果推論の方法論に対応する正確な統計解析手法の開発
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19K11871
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
千葉 康敬 近畿大学, 大学病院, 准教授 (80362474)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 因果推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
ランダム化臨床試験の主目的は治療の因果効果の推定である。それに加えて、ある特定のバイオマーカーが予後因子であるのか予測因子であるのかを探索的に検討したい場合がある。ここで、予後因子とは陽性か陰性かによって結果が異なる因子のことであり、予測因子とは陽性か陰性かによって治療効果が異なる因子のことである。予後・予測因子を探索するための標準的な方法は、治療(新治療 or 標準治療)、バイオマーカー(陽性 or 陰性)、これらの交互作用項を説明変数とする回帰分析である。これに対して、最近、Chiba(Clinical Trials, 2019; 16: 237-245)は、因果推論で用いられるresponse typeの概念に基づいて、予後・予測因子を探索する新しい方法を提案した。ただし、この方法の適用は、結果変数が2値変数の場合に限定される。 2年目となる今年度は、Chiba (2019) を、結果変数が生存時間の場合に拡張することを検討した。元々response typeは結果変数が2値変数のときに定義されているものであるため、結果変数が連続的な変数である生存時間に拡張するのは困難である。この困難を克服するために、生存時間変数を、ある時点までにイベントを起こしているか否かの2値変数し、その時点を予め定めた期間上で積分することによって平均化するアプローチで検討を進めた。検討の結果、このアプローチが平均生存期間(restricted mean survival time; RMST)に基づく予後・予測因子の探索法になることがわかった。この研究の結果は、Mathematics誌の特集号(Applied Medical Statistics: Theory, Computation, Applicability)に採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で記載した内容は、本研究の本筋というよりは枝葉に当たる部分である。本筋となる平均因果効果の区間推定法については、重大なミスが見つかった。新型コロナウイルス感染症の影響で各種対応に追われたこともあり、解決策を見出すまでにかなりの時間を費やすことになった。結果として、進捗に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本筋となる平均因果効果の区間推定法について研究を進める。結果変数が2値変数の場合の結果をまとめ、論文投稿するのが最優先事項である。 次に、「研究実績の概要」で記載した内容を応用することによって、結果変数が生存時間の場合への拡張を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、学会が中止もしくはオンラインでの開催となった。予定していた学会出張旅費を使用しなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。新型コロナウイルス感染症は研究の進捗に遅れが生じた一因でもあるため、補助事業期間の延長を希望したい。
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