2021 Fiscal Year Research-status Report
IoTデバイスのための組込みアプリケーションへの自動適応化技術
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19K11873
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
田中 清史 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (20333445)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リアルタイムシステム / 命令セット / 適応化 / FPGA / リアルタイムスケジューリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,組込みアプリケーションの要求にしたがって必要最小構成のCPUおよびOSを自動生成する技術を研究し,IoT時代における機器開発の効率化,コスト削減,および性能向上を支援することを目的としている.2020年度以降は全体計画のうち,(6)適応化用CPUの詳細設計・開発,(7)CPU適応化ツールの実装,(8)適応化用OSの詳細設計・開発,(9)OS適応化ツールの実装,(10)適応化CPU・OSの評価,(11)適応化スケジューラの実装,および(12)適応化スケジューラのリアルタイム性評価について研究を進める計画であるが,このうち2021年度は主に(7),(9),(10),および昨年度から引き続き(11)を実施した. 上記項目(7)について,前年度に設計したMIPS命令セットおよびRISC-V命令セットを実行する最適化可能プロセッサに対して,ターゲットソフトウェアコードを解析して,当該ソフトウェアコードの実行に必要なハードウェア要素のみから構成されるプロセッサのハードウェア記述を出力するツールを開発した.これと並行して,項目(9)において,前年度に設計・実装した組込みOSに対して,上記(7)と同様に,実行するタスクプログラムコードを解析し,その実行に必要なシステムコール,および必要なシステムコール内のコード断片のみからなるOSを自動構成するツールを開発した. 項目(10)において,上記の最適化された適応化CPUと自動構成したOSおよびタスクコードがFPGA上で正しく動作することが確認し,適応化CPUおよび適応化OSの評価を行った. 項目(11)において,これまでに本研究で提案したタスクスケジューリングアルゴリズムに加え,優先度以外にタスクの重要度を導入した新たなアルゴリズムを提案し,適応化スケジューラの対象に追加した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】で述べた通り,研究実施計画として挙げた項目(7),(9),(10),および(11)について達成した. 項目(7)に関して,MIPS命令セット,RISC-V命令セットともに,フルセットではないものの,通常のアプリケーションが使用する命令群はそのほとんどが実装されており,さらに実際の組込みOSが稼働できるレベルのものである.これをベースとして,組込み用途のベンチマーク集であるMiBench suiteの各種アプリケーションを対象として開発したツールにより適応化が可能であることが実証された.このツールはGUIを持つことから,ユーザが容易に適応化を実行することが可能である. 項目(9)について,前年度に開発したμITRON4.0仕様(スタンダードプロファイル)に準拠するOSに対して,開発したツールにより,タスクプログラムのソースコードを入力として自動的に適応化が可能であることを確認した.スタンダードプロファイルにしたがうことにより,実用的な組込みアプリケーションを対象とすることが可能となっている.また,上記(7)と同様に,GUIにより用意に適応化を行うことが可能である. 項目(10)に関して,Mibench suiteの各アプリケーションを対象として評価を行い,適応化により,CPUに必要なFPGAリソースとOSのコードサイズが削減され,さらに実行時間が短縮されることが確認できた. さらに項目(11)において,タスクの重要度を導入し,より重要なタスクの応答時間が短縮可能であることを確認した. 上記の内容に関して,国際会議3件の発表を行った.以上から,当初の計画通り遂行し,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,全体計画のうち項目(12)適応化スケジューラのリアルタイム性評価を中心に研究を実施するが,併せて適応化スケジューラを項目(8)で開発したOSに導入することを試みる.これまではCPUおよびOSの適応化の研究と,適応化スケジューラ部分を分離して研究してきたが,これらを統合し,適応化組込みシステムとしての技術を確立し,その有用性を評価する. また,これまで提案してきた適応化技術はシングルCPUとOSを対象としたものであったが,これをマルチコアを対象としたものに拡張していく. さらに,リアルタイムタスクスケジューリングの研究を継続し,リアルタイム性を向上させる新たなアルゴリズムや,マルチコアに対応したアルゴリズムを研究していく. 評価において得られた結果をまとめ,国際会議およびジャーナル論文として発表していく予定である.
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Causes of Carryover |
各種研究会議がオンライン開催となったため,予定していた旅費について執行されなかったことから次年度使用額が0より大きくなった.令和4年度の研究実施をより円滑にするため,人件費・謝金に充てる予定である.
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