2019 Fiscal Year Research-status Report
超伝導ディジタル回路デバイスのためのパルス論理を活用した論理設計手法の探求
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19K11888
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
鬼頭 信貴 中京大学, 工学部, 講師 (90630997)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 単一磁束量子回路 / 論理設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は超高速かつ省エネルギな超伝導単一磁束量子(RSFQ)回路のための論理回路の自動設計手法の開発を目的とする。RSFQ回路が電圧パルスを用いる性質を論理設計に積極的に用いることでコンパクトな回路の実現を目指す。 本年度は以下の点に関して研究を進めた。 1. 複雑なパルス到着タイミングをもつRSFQ回路を記述可能な回路の記述方法を提案し、その記述に基づく論理回路のシミュレーションツールを実現した。従来のRSFQ用の回路記述手法では、RSFQ論理ゲートの入力について1クロック周期に1度のパルス入力のみ考慮していた。1クロック周期内で複数のパルスをゲート入力に入力することでコンパクトなRSFQ回路を実現できることが判明しているが、従来手法とそれに基づくシミュレーションツールではそのような複雑なパルス到着タイミングを含む回路を扱うことができない。従来手法を拡張する提案手法とそれに基づくシミュレーションツールにより、このような複雑なパルスのタイミング設計を導入した回路をレイアウト設計無しに論理設計のみでシミュレーションが可能となった。 2. クロック入力を必要とするゲート数が少なくなるようCMOS回路向けネットリストをRSFQ回路向けに変換する手法を提案した。RSFQ回路では基本的な論理ゲートそれぞれにクロック入力が必要でありその配線に大きな面積を要する。提案手法では、パルスの到着タイミングの工夫でリセット付きフリップフロップ素子をNIMPLYゲートとして使用できること、特定の条件下においてパルス合流素子によりOR演算が可能であることを利用し、論理ゲートをこれらの素子に置き換えることでクロック配線を削減する。 3. 近年注目を集めているニューラルネットワークの処理において現れる行列積演算に着目し、RSFQ行列積演算回路を提案した。パルスを用いる性質を生かすことでコンパクトに実現できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複雑なパルス到着タイミングをもつRSFQ回路を取り扱うことのできるシミュレーションツールを実現できた。また、本研究課題の目標であるパルス到着タイミングを工夫することでRSFQ回路をコンパクトに構成する手法の提案に関し、1つの手法を示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度取り組んだパルスの到着タイミングを工夫することでRSFQ論理回路をコンパクトに実現する手法を拡張する。具体的には、RSFQ回路の性質を活用した論理実現手法を新たに考案することでより小さな回路として実現可能とすること、論理段数のバランス化などのRSFQ論理回路向けの論理設計手法と組み合わせること、などを検討する。 また、パルス論理の性質を活用しコンパクトに実現した行列積演算回路に関しても、より完成度を高めたものを提案する。特に2020年度は、演算精度を要求に応じて変更できる回路構成の開発に取り組む。
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Causes of Carryover |
今年度導入予定であったワークステーション1台に関して、プロセッサ製品・ワークステーション製品の刷新が進まず想定した性能向上が見込めず2019年度の購入を見送った。2020年度での購入へと切り替える。 また、コロナウィルスの影響により年度末の国内学会の現地開催が中止となり旅費に未使用が生じた。2020年度以降、コロナウィルス終息後の学会発表へ使用する。
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Research Products
(8 results)