2019 Fiscal Year Research-status Report
多層ネットワーク理論の深化とネットワークのロバスト性向上手法への展開
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19K11917
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
津川 翔 筑波大学, システム情報系, 助教 (40632732)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多層ネットワーク / ロバスト性 / 影響最大化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、複数のネットワーク同士が相互に依存し合うような多層構造を有するネットワークのロバスト性を向上させる手法を開発することを目指している。 2019年度は、ネットワークに対して少数のリンクを付加することで多層ネットワークの攻撃に対するロバスト性をどの程度向上させることができるか調査した。多層ネットワークの中でも相互依存ネットワークと多重ネットワークの二種類を対象とした。モデルを用いて様々な構造的特徴を有するネットワークを生成し、リンク付加によるロバスト性向上効果を調査した。その結果、ノードの次数に基づくリンク付加手法によって効率的に多層ネットワークのロバスト性を向上させることができることを示した。リンク付加による単層ネットワークのロバスト性向上効果はこれまでにも知られていたが、多層ネットワークにおいてリンク付加がどの程度有用であるかは十分明らかにされていなかった。本研究により、多層構造を有するネットワークにおいてもリンク付加がネットワークのロバスト性を向上させるのに有用であることが示唆された。 さらに、多層ネットワーク上での有害な情報の拡散を制御する手法を検討した。これまでは単一の層のネットワーク、すなわち有害な情報の拡散されるチャネルが1種類の場合における、有害情報の拡散抑制手法が研究されてきた。本研究では、それを多層ネットワーク、すなわち複数のチャネルで有害情報が拡散される状況に拡張した。少数のノードから有害な情報を打ち消す訂正情報を拡散させることで、有害な情報の拡散をどの程度抑えることができるかをシミュレーションによって評価した。その結果、条件によっては、ある程度有害な情報の拡散を制御できることが分かるとともに、訂正情報を拡散するノードの選択手法に拡張の余地があることが分かった。今後は多層ネットワークに適した訂正情報を拡散するノードの選択手法を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は多層ネットワークにおけるリンク付加問題および有害情報拡散抑制問題を定式化し、ヒューリスティックなアルゴリズムの設計と評価を実施した。 当初の2019年度の計画では、問題の定式化と近似アルゴリズムの設計を実施する予定であった。近似アルゴリズムの設計には至っていないが、2020年度に実施予定であった大規模なネットワークにも適用可能なヒューリスティックアルゴリズムの設計と実験的評価を実施することができた。 当初計画と研究実施項目の順番が異なるが、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降は、ネットワークのロバスト性を向上するための近似アルゴリズムの開発を行う。これによって、ネットワークのロバスト性をどの程度向上し得るかの理論的可能性を明らかにする。さらに、2019年度に検討したヒューリスティックアルゴリズムには改良の余地が存在することが示唆されたので、その改良にも併せて取り組み、改良したアルゴリズムの性能評価を行う。
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Causes of Carryover |
計画では開発したアルゴリズムの評価に用いる高性能計算機の費用を計上していたが、本年度開発したのは軽量なヒューリスティックアルゴリズムであったため既有の計算機を評価に用いることができた。そのため、計算機購入費用が今年度は不要となった。一方旅費は想定よりも多くかかったが、物品費が不要になった分と合わせると残額が生じた。 残額は2020年度購入予定の評価用の高性能計算機費用の一部として用いる予定である。
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