2020 Fiscal Year Research-status Report
Non-congestion datacenter networks based on the distributed rebalancing algorithm
Project/Area Number |
19K11928
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
太田 聡 富山県立大学, 工学部, 教授 (80438168)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | データセンタ / ネットワーク / シミュレーション / Clos網 / スループット / 光スイッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,データセンタ・ネットワークのトポロジーとしてClos網を想定し,分散処理によりフローをルーティングし,性能劣化を防ぐ分散リバランシング制御を検討している. これまでに,Clos網に分散リバランシング制御とランダム・ルーティングを適用したときのスループット特性を,パケット・レベルの計算機シミュレーションにより明らかにした.分散リバランシング制御としてはフローの再ルーティングを省略するバランシング・アルゴリズムを評価した.その結果,スループットが基準値以下となるフロー数が,バランシング・アルゴリズムを適用することで従来技術を用いた場合より少なくなることを明らかとした.このことから,バランシング・アルゴリズムは,ユーザが性能の劣化を経験する頻度を低減可能であると結論できる.この結果は国際会議と論文誌で発表した.さらにClos網の基本的な性質を明らかにする試みとして,ブロッキングを解消する既存接続の再配置問題にも取り組み,線形な整数計画問題への定式化や,従来知られていない再配置回数の上界値を明らかにした. Clos網に基づくデータセンタ・ネットワークの構成法として,光スイッチを構成要素とする方法がある.この方法において,様々な帯域要求に柔軟に対応可能なエラスティック光ネットワーク技術を適用することは,極めて有効である.この構成法に関し,従来知られている非輻輳条件を満たすには,非常に大きなハードウェア量が必要となる問題があった.本問題に対し,複数のFrequency Slot Unit(FSU)を収納するメタスロットの概念を提案し,非輻輳条件を示し,従来の条件に比べはるかにハードウェア量を削減できることを示した.この結果は国際会議等で発表した.また,メタスロットを適用した場合,ハードウェア量を最小化する最適化手法を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エラスティック光ネットワーク技術を適用したデータセンタ・ネットワークにおけるメタスロット手法に関し,これまでにWSW1(W:波長変換スイッチ,S:空間スイッチ)と呼ばれる構成について検討してきたが,2020年度は,新たにWSW2と呼ばれる構成に対するメタスロット手法の適用についても検討した.本構成について,ビンパッキング問題を応用することでハードウェア量を最小化できることを明らかにした.この結果は論文誌に投稿中である.また,Clos網の基本的な理論的性質に関する研究を進め,古典的な回線交換の条件を想定し,ブロッキング発生時にそれを解消する再配置の問題について,線形な整数計画問題への定式化や,従来知られていない再配置回数の上界値を明らかにした.また分散リバランシング制御を適用したClos網の省電力化の研究にも着手した.これらの進展はあったものの,論文誌や国際会議等での成果の公表が遅れている状況にある. 当初の計画では,2020年度に分散リバランシング制御の実装方法を明らかにし,実験による評価に着手することとしていた.この計画に対し,実装と実験系構築に必要な,スイッチとして使用するPCのパーツ,多ポートのネットワーク・インタフェース・カード等を一部調達し,小規模な実験系構築の準備をした.しかし,ソフトウェア実装方法の詳細は今後明らかにする必要があり,実験による評価には着手していない.したがって当初の計画に比べ進捗は遅れていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,実機で構成したClos網に分散リバランシング制御を実装する方法を検討する.また,その結果に基づいて実機上に分散リバランシング制御を実装し,小規模なClos網を実験室内に構成して実験を通じて動作を確認する.Clos網の構成要素は,ネットワーク・インタフェースを複数備えたPCとする.このPCをL3スイッチとして動作させ,フロー発生時にフロー・レベルのルーティングを実行するソフトウェアを実装する.フローの発生を識別することは,パケットをキャプチャし,ヘッダに含まれるフロー識別子をハッシュ表の記録と照合することで実現可能である.フロー・レベルのルーティングは仮想スイッチやLinux OSが提供するパケット・フィルタ機能を活用することで実現する.実験では,iperf等,パケット流を人工的に発生するソフトウェア・ツールを使い負荷を与え,動作確認する.また,フロー発生頻度や,フローの同時接続数に対する特性評価も明らかにして,実環境における分散リバランシング制御の実現性に見通しを付ける. 実装と実験に加え,現在までの研究成果で未発表のものについては,論文誌,国際会議への投稿を進める.これには,エラスティック光ネットワーク技術を適用したデータセンタ・ネットワークのWSW2構成に対するメタスロット手法の最適化,古典的な回線交換型Clos網における再配置問題,等が含まれる.さらにデータセンタにおいては電力消費が重要な問題であることから,分散リバランシング制御に基づくClos網で,負荷に応じてスイッチ電源を投入・切断することで省電力化する手法についても研究を進める.
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウィルス感染症の流行により,参加を予定していた学会の大会等がオンライン開催となり,計画していた旅費を全く使用しなかった.その余剰の大部分は,実験で使用する消耗品等の物品購入費として使用し,物品費は計画以上に使用したものの,若干の余剰が発生した.この次年度使用額は物品費として消耗品の購入に充てる.
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