2020 Fiscal Year Research-status Report
現象数理学に基づく無線LAN通信品質のモデル化技術
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19K11944
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
小畑 博靖 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (30364110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 知佐 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (60509058)
石田 賢治 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (70221025)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 無線LAN / 通信品質 / 現象数理学 / モデル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度では、以下のように無線LAN通信品質のモデル化のための検討を実施した。 (1)前年度までの実験成果を元に検討を始めていた移流拡散方程式に基づく伝送レート変化モデルの検証を実施した。具体的には、送信電力および地表属性を変更した場合における提案モデルによる推定値と実測値とを比較評価した。その結果、近距離においては推定精度が良いものの、特定の場合において、遠距離になると測定精度が低下することが分かったたため、提案モデルにおける伝送レートの再現方法の再検討を実施した。 (2)隣接チャネル間干渉におけるスループット特性の評価をキャプチャ効果を考慮しつつ実施した。その結果、チャネルと無線LANシステム間の距離の組み合わせによって無線LANシステム間に大きなスループット不公平が生じることを確認した。また、このスループット不公平を改善する方法についても検討を行いその効果を確認した。 (3)無線LANマルチホップネットワークにおいて、これまでに提案している結合振動子の同期現象に基づくMAC制御のスループット特性を評価した。その結果、同期現象を元にした送信タイミングとキャプチャ効果がどのようにスループット性能に影響を与えるかについて明らかにした。 (4)前年度に引き続き移動AP環境における通信特性を評価した。特にデータ送信範囲を限定する情報フローティングの概念を適用した場合における評価を実施した結果、ノードの配置と移動方針により特性が大きく変化する場合があることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、現象数理学の観点を用いて効率的かつ汎用性の高いWLAN通信品質のモデル化技術を実現するため、(1)実機を用いた基礎データの取得(2)実験データに基づくモデル検討(3)検討したモデルの検証、の3つのステップを設定して進める。2020年度は、前年度に引き続いてステップ1の基礎データ取得を実施した。データ取得は、前年度のマルチホップ環境、キャプチャ効果の発生する環境、アクセスポイントが移動する環境に加えて、隣接チャネル干渉が発生する環境において実施した。さらにステップ2の実験データに基づくモデルの検討を行い、提案モデルの基礎評価を実施した。得られた成果の一部は、国際会議および電子情報通信学会の研究会において発表しており、ある程度計画通りに進捗していると考えられる。なお、新型コロナウィルス感染症拡大による影響で一部の実験が実施できていないため、次年度において引き続き基礎データ取得を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は以下のように研究を進める予定である。 まず、前年度に引き続き、無線LAN環境における伝送レート利用率とスループットの変化の基礎データ取得を継続して実施する。前年度と同様にマルチホップ環境、キャプチャ効果が発生する環境、APや端末の移動、および隣接チャネル干渉が発生する環境での評価を実施する。ここでは前年度、新型コロナウィルス感染症拡大による影響により十分データが取得できなかった内容について重点的に実験を実施する。また、前年度に検証を実施した移流拡散方程式に基づく伝送レート変化とスループットの再現モデルの拡張を実施する。前年度では、送信電力と地表属性の組み合わせによって通信距離が大きい場合に推定精度が低下することが判明しているため、これらを考慮してモデルの拡張を実施する予定である。次に、拡張したモデルと実機実験結果との比較を行い検討モデルの検証を実施する。さらに、得られた成果の研究会および国際会議での発表や学術論文への投稿・掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
前年度後半と同様に新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、年度内に予定した研究発表に伴う出張がすべて取りやめとなったことと、新型コロナウィルス感染症対策のため屋外での実機実験機会が限られた結果、旅費および実験に関する予算の執行が予定よりも少なく、予定していたよりも多くの次年度使用額が発生した。今年度も、引き続き新型コロナウィルス感染症の影響を受ける可能性が高いが、可能な範囲での実機実験や前年度に実施できなかった成果発表等を積極的に行い有効利用する予定である。
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Research Products
(6 results)