2021 Fiscal Year Research-status Report
動的無線マルチホップネットワークの接続構造変化に適応するネットワーク符号化方式
Project/Area Number |
19K11955
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野口 拓 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (00388133)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネットワーク符号化 / 無線マルチホップネットワーク / アドホックネットワーク / VANET / フラッディング / ブロードキャスト |
Outline of Annual Research Achievements |
無線マルチホップネットワークにおいて最も基本的な通信形態として,ネットワー内のすべての端末に同一パケットを一斉配信するフラッディングがある.フラッディングでは,ネットワーク全体にパケットが伝搬するため,ネットワークに多大な負荷を与える.無線マルチホップネットワークでは端末電池容量や周波数帯域などの資源が有限であるため,フラッディングの負荷削減が特に重要となる.このため,トラヒック削減効果を持つネットワーク符号化技術を用いてフラッディング使用時のネットワーク負荷を低減させる方法が検討されている.本研究は,端末の移動や参加離脱によってネットワークの接続構造が動的に変化する動的無線マルチホップネットワークにおいて,ネットワークの接続構造変化に適応するネットワーク符号化方式の開発を目指す. 本年度は,その第3段階として,車両アドホックネットワークなどに代表される高速で移動する端末が含まれるアドホックネットワークにおいて高精度なネットワーク接続構造推定を行うために,各端末が自身の近隣端末からのパケット受信履歴に加えて,近隣端末からの受信信号強度情報を用いて自身と近隣端末の相対距離を推定することで,ネットワーク接続構造推定を行う新手法を提案した.新手法は,レイヤ3情報であるパケット受信履歴情報とレイヤ1,2情報である受信信号強度情報で用いるクロスレイヤ型アプローチとなりレイヤ間独立性が低下するが,高い推定精度が期待できる.性能向上を定量的に評価するため,計算機シミュレーションを用いた性能検証を行った.その結果,提案推定法の接続構造推定精度がレイヤ1,2情報を用いない場合と比較して約30%向上することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,近隣端末からの受信信号強度情報を用いて自身と近隣端末の相対距離を推定することで,接続構造推定を行う新手法の提案が完了した.また,計算機シミュレーションを用いて,既存手法との性能比較を行い提案推定法の有効性を明らかにした.本年度は,自動車など高速で移動する端末と歩行者や自転車など比較的低速で移動する端末が混在する環境下での性能評価を行った.移動速度が大きく異なる端末が混在する環境では端末移動度の推定精度が低下し,その結果,ネットワーク接続構造推定の精度も低下する.このため,ネットワーク接続構造推定の精度が低い場合に対応する動的符号化数変更アルゴリズムの提案が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に提案した新たなネットワーク接続構造推定法に対応した新たな動的符号化数変更アルゴリズムを提案し,適応的ネットワーク符号化方式のさらなる性能向上を目指す.また,適応的ネットワーク符号化の応用システムとして,車両アドホックネットワークおよびUAVで構成したドローンアドホックネットワークに対するネットワーク符号化適用可能性を検証する. 新たな動的符号化変更アルゴリズムについては,ネットワーク内の端末密度のばらつきを考慮したエリアごとの符号化数変更,および,接続構造推定精度が低いノードにおける符号化数変更の2種類の動的符号化数変更手法を提案する. 車両アドホックネットワークおよびドローンアドホックネットワークを対象とした適応的ネットワーク符号化応用システムについては,計算機シミュレーションおよびプロトタイプシステムを構築した実装実験の両面から,適応的ネットワーク符号化のトラヒック削減効果に加えてリアルタイム応答性能を明らかにし,適用可能性を定量的に検証する.
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響でオンライン開催の国際会議が増加し,旅費使用額が想定より少なくなった.次年度へ繰り越す残額については,国際会議の代わりに学会論文誌へ投稿することで使用する予定である.
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