2020 Fiscal Year Research-status Report
モジュラー設計可能な暗号プロトコルの設計技法に関する研究
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19K11960
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
藤崎 英一郎 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00805608)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 耐量子計算機安全性 / UC安全性 / 帰着効率 / 公開鍵暗号 / 署名 / コミットメント / 格子問題解読 |
Outline of Annual Research Achievements |
将来大規模量子計算機が実現される可能性を鑑み、耐量子計算機安全かつモジュラー設計可能な暗号部品の研究を行った。目標はモジュラー設計可能な公開鍵暗号の汎用設計に使われるFujisaki-Okamoto (FO) 変換を量子ランダムオラクルモデル上での安全性証明の帰着効率を改良すること。これを実現するために、量子ランダムオラクルモデルにおける有名なOne-Way-to-Hiding (O2H) 補題の改良に着手し今まで loose であった帰着効率を tight にすることに成功した。汎用結合安全コミットメントはモジュラー設計可能な任意の暗号プロトコルの構成を可能にする適用的攻撃安全なものとしては最も効率の良い方式を論文誌に投稿した。耐量子計算機暗号でもっとも有望視されているのは格子問題に基づく暗号である。格子暗号を構成するにあたり最も基本となる問題は最近ベクトル問題 (CVP) と最短ベクトル問題 (SVP) であるが、これらの問題は量子計算機を用いても解読が困難と考えられている。ここで解読困難性は漸近的な議論であり、次元が小さければ解読されてしまう。そこでどの次元まで実際に解くことが出来るかを(通常の)計算機を用いて解読実験を行うことにより、格子暗号のパラメータ設定に寄与できる。今年度、ダルムシュタット工科大学のSVP格子チャレンジの提供する154, 156, 158次元のランダム格子のアルゴリズム改良と解読実験を行い世界記録を更新することに成功した。これらの成果は、国内の研究会で発表した。この他の成果として、前年度進めていた署名の帰着効率を改善した論文が電子情報通信学会の論文賞を受賞することが決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子計算機の実現可能性が大きな話題になる状況で、研究の方向性に耐量子安全性が加わることになった。FO変換の量子ランダムオラクルモデル上での安全性証明の帰着効率を改良できたと考えており、これは大きな成果である。前年度署名の帰着効率を改善した論文は電子情報通信学会の論文賞の受賞が決定するなど高い評価を受けている。また、格子最短ベクトル問題解読に取組み、解読アルゴリズムの改良を行うと共に解読実験では世界記録を更新することに成功した。一方、コロナの世界的流行のため他の研究者と直に話し合う機会をほとんど持てず、上記以外の研究の進展がほとんどなかった。また今年度査読付き論文を発表出来なかった。 以上、研究進捗の遅れがあったが、現在国際会議や論文誌に提出している結果があり停滞や回り道はしたが後半取り返し概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
社会的状況から不確定な要素はあるが、耐量子安全性を追求した上でモジュラー設計可能な暗号プロトコルの設計の研究を進めていく。また、格子問題の解読研究も並行して行う。
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Causes of Carryover |
コロナの流行により国内外の出張が全く出来なかったこと、研究集会が開けなかったことが理由である。令和3年度は、遠隔会議による研究環境の充実のための設備購入、及び正常化後の国内外の出張や研究者の招待のために予算を使う予定である。
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