2020 Fiscal Year Research-status Report
New solvers and strategies based on mathematical analyses to enhance parallel performance on massive computers
Project/Area Number |
19K12008
|
Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
阿部 邦美 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 教授 (10311086)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生野 壮一郎 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 教授 (70318864)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | Krylov空間法 / 線形方程式 / 大規模計算機環境 / 通信箇所の削減 / 収束スピードの改善 / 丸め誤差解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くのプロセッサを用いて計算可能なハードウエアが開発され,今日,ペタスケールの性能が実現されている.近年では,こういった大規模計算機の性能を十分に活かすことができるKrylov空間法の研究が活発に進められている. Krylov空間法のアルゴリズムは,行列ベクトル積,内積,ベクトル更新(ベクトル和とスカラー倍)から構成されている.1プロセッサを使用する場合の計算時間は,主に行列ベクトル積の演算であるが,大規模計算機環境における効率性のボトルネックは,内積演算で起こるプロセッサ間の通信に関するオーバーヘッドである.この問題点を克服するため,近年,大きく分類して3つのアイディアから成る解法群,すなわちcommunication avoiding Krylov空間法,pipelined Krylov空間法,さらにs-step Krylov空間法が開発されている. しかしながら,Krylov空間法は丸め誤差の影響を受け易く,しばしば収束スピードの悪化という問題が起きる.すなわち,大規模計算機環境を想定し,効率性のボトルネックとなる通信箇所を減らす修正を施したアルゴリズムを開発したとしても,その副作用として収束スピードの悪化など,デメリットが発生することがある. そこで,通信箇所を減らし,さらに従来と同程度の収束スピードを保つことができるような(丸め誤差が収束性に与える影響を考慮した)アルゴリズム,すなわち 新たなcommunication avoiding 積型解法(BiCGSTAB法,GPBiCG法,BiCGstab(ell)法),pipelined 積型解法,s-step 共役勾配法などを開発した.さらに,われわれが開発した解法や大規模計算機向けに開発された解法の内積演算から発生する丸め誤差が収束性に与える影響を数理的に解析した.また,誤差の制御手法を明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目の研究計画は,大規模計算機環境を活かすソルバーの設計,すなわち大規模計算機環境向けになっていない積型解法や派生した解法を大規模計算機向きに設計することである.また,これまでに開発された大規模計算機向き解法のうち,丸め誤差の影響を受けて収束スピードの悪化が生じる一部のアルゴリズムを修正することである.2年目の研究計画は,丸め誤差が収束性に及ぼす影響の解析と,その結果に基づいた誤差の制御手法を開発すること,および(本申請で)開発した手法の並列性能を評価することである. そこで,大規模計算機向け積型解法のアルゴリズムを設計した.また,アルゴリズム(われわれが開発した解法や従来の大規模計算機向け解法)の内積演算から発生する丸め誤差が収束スピードに与える影響を数理的に解析した.そして,その解析結果から従来の誤差の制御手法が大規模計算機向けアルゴリズムにも適用することができることを明らかにした.さらに,分担者が一部の大規模計算機向けアルゴリズムの並列性能を評価した.一方,コロナ禍で海外の研究協力者と研究交流ができていないこと,また健康上,学内業務上の理由から,派生解法についての課題や開発した手法の並列性能評価に十分に取り組むことができなかった.すなわち,1年目,2年目の研究計画の一部が達成できていないため,進捗状況はやや遅れていると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
大規模計算機環境の性能を活かすための積型解法のアルゴリズムを設計した.また,われわれが開発した解法や大規模計算機向けに開発された解法の内積演算から発生する丸め誤差が収束スピードに与える影響を数理的に解析した.そして,その解析結果から従来の誤差の制御手法が大規模計算機向けアルゴリズムにも適用することができることを明らかにした.さらに,分担者が一部の大規模計算機向けKrylov空間法の並列性能を評価した.すなわち,1年目,2年目において,大規模計算機環境を活かすための積型解法族の設計,丸め誤差の影響の解析,また誤差の制御手法の開発,一部の並列性能評価について進めることができた.しかし,Induced Dimension Reduction(IDR)法,ブロック解法などの派生した解法に対する大規模計算機向きアルゴリズムの設計は未だである. そこで,communication avoiding 積型解法,pipelined 積型解法を設計したのと同じアナロジーで,大規模計算機環境向きIDR法,ブロック解法の設計に取り組む.また,初年度に得た収束スピードに関する解析結果から,派生した解法群に対する従来の制御手法は有効であると推測できるため,大規模計算機環境向きIDR法,ブロック解法などに制御手法を適用し,その有効性を調べる. 次に,複数プロセッサを用いた数値実験によって,われわれが開発したアルゴリズムの収束スピード,計算時間,並列化効率はまだ明らかにされていない.そこで,分担者とともに,複数のプロセッサを用いて,われわれが開発したアルゴリズムの並列性能を評価する.
|
Causes of Carryover |
研究推進のために必須となる最新かつ複数のプロセッサを搭載した計算機,および計算検証のために必要なコンパイラを購入する予定であった.しかし,コロナ禍で研究遂行が不安定となり,また健康上,学内業務上の理由から,最新かつ複数プロセッサを搭載した計算機の購入を見送ることにした.また,国際会議において成果を発表することができなかった.さらに,本研究の研究協力者の一人はオランダであるが,当初に計画していた海外渡航して(対面による)研究打ち合わせすることが困難であった.そのような状況から,最新の計算機を購入することをせず,また海外渡航することができず,残金が生じてしまった.次年度では,前年度に生じた残金で,必須となる最新かつ複数のプロセッサを搭載した計算機を購入する.さらに,オランダでの対面による研究打ち合わせや国際会議における成果発表のために海外渡航する予定である.
|