2020 Fiscal Year Research-status Report
鼻腔・副鼻腔の音響的および構造的多様性とその音声学的寄与の探究
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19K12031
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
北村 達也 甲南大学, 知能情報学部, 教授 (60293594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真栄城 哲也 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (30361356)
竹本 浩典 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (40374102)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鼻腔 / 副鼻腔 / 声道模型 / 音響解析 / 音響シミュレーション / FDTD法 / 鼻音 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,CT装置により撮像された鼻音発声時の3次元データに基づいて,実体模型の音響計測,FDTD法による音響シミュレーションに取り組んだ. 実体模型は3Dプリンタにより造形しており,その造形精度は音響計測の結果に影響を及ぼす.3Dプリンタのスペックはメーカーから提示されているが,実際の模型における精度は未確認であった.そこで,産業用CT装置にて実体模型の3次元形状を精密に計測し,実体模型の元となったCADデータと照合した.その結果,98%の領域において偏差が±0.30 mm以下となっており,十分な造形精度が得られていることを確認した. 実体模型の音響計測においては,鼻孔(音の放射面)からの方向と距離によって音響特性が複雑に変化することを発見した.つまり,鼻音からの放射特性には強い方向・距離依存性があるということである.この点については,今後,音響シミュレーションを用いて個人差も含めて詳細に解析する計画である. 一方,音響シミュレーションを用いた検討では,まず鼻音の音色に大きく寄与する伝達関数上の零点の生成原理について調査した.声門から上咽頭下部までを解析領域とし,鼻音生成時の副鼻腔以外の分岐管が生成する零点の成因について検討した.その結果,分岐管は口腔,左右の喉頭蓋谷,左右の梨状窩に加えて,左右前口蓋弓裏面の中咽頭腔の7つあることが明らかになった.そして,これらは連成振動系を形成し,横モードも加わる複雑な相互作用により,多数のディップを生成することが明らかになった. さらに,鼻腔・副鼻腔領域が鼻音に及ぼす影響を調査するため,これらの領域の変形による伝達特性(鼻音のスペクトル)への影響を調査した.副鼻腔における疾患に対する手術前後の音声およびCTデータを用いて解析し,音響シミュレーションにより手術前後の鼻音のスペクトルとよく一致する結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では東京慈恵会医科大学附属病院の協力を得て研究の基礎となるCTデータを撮像していたが,COVID-19感染防止のため研究用のCT撮像が一切できなくなり,計画していた人数,条件のCTデータが入手できなくなってしまった.現在は,初年度に試験的に収集したデータを用いて研究を行っているが,鼻腔形状や鼻腔の伝達特性における個人間の差異等の重要な検討ができていない.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,CT撮像ができる医院と研究協力関係を構築すべく調整中である.これが実現し,かつCOVID-19の感染状況が改善すれば,再びデータ収集を行うことができるようになり,計画した研究が実施できるようになる.
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Causes of Carryover |
研究計画にて購入を予定していた高性能プローブマイクロフォンを使わず,より安価なマイクロフォンにて音響計測を行っているため(余剰分は返還する予定である).
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Research Products
(4 results)