2019 Fiscal Year Research-status Report
Behavioral suppression and working memory training of ADHD children by games utilizing visual stimulation
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19K12063
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
縄手 雅彦 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (10198400)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ADHD / 動的視覚刺激 / 行動抑制 / ワーキングメモリ / 訓練ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる今年度は,まず動的な刺激を提示し続けることでADHD児の注意が有意に持続するかについて,ADHD診断のある児童3名と多動傾向の児童1名に対してGo/NoGo課題と課題の背景に動きを持たせたものの2種類を用いて検証し,動的な背景を持つ課題で有意に正答率が向上することを確認した.これにより,動的な刺激による有意な持続について,学習ゲームに取り込むことの意義が確認された.
上記の結果を基に,ワーキングメモリ訓練課題についてゲーム化に関する検討を行った.当初は,申請書に記載のN-Back課題をモチーフとした2画面タイプのゲームの開発を行ってその難易度やゲーム要素についての検討を,実際にADHD診断のある児童やその他の児童に対して実施した際の成績や児童が感じる楽しさなどについて行った.しかし,2画面タイプの記憶課題は事前の想定以上に難易度が高く,児童への記憶負荷とゲーム遂行のための操作技術もある程度のものが要求されることがわかり,小学校中学年では難しすぎることが判明した.そこで,ゲームの方向性を変えることを年度後半に検討した.
現在開発中のゲームはトロッコ列車に乗って洞窟を進むモチーフなど動的な刺激を多く取り込みつつ,先行するキャラ(泥棒)の逃走経路を覚えて選択しながら追跡するゲームとなっている.予備実験をADHD児に対して行っているところであり,ゲームのスコアとワーキングメモリ測定課題の一つであるリーディングスパンタスクとの相関がみられたことから,現在開発中のゲームは言語性ワーキングメモリの訓練としての可能性が示された.引き続き,実験を重ねてゲームの開発を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動的な視覚刺激によるADHD児の注意の持続自体はその有意性が確認され,国内論文誌に掲載が決まったことから,研究の動機の正当性は確認でき,手法の検討に自信をもって移行することができた.一方で,当初のゲーム案では小学校の児童にとっては記憶負荷と操作の難易度の点で問題が見られたため,ゲーム案の練り直しが必要となり,ある程度の時間を要したが,プロトタイプは年度内にほぼ形ができたことからほぼ予定通りの進捗と言える.
また,実際に効果を検証する上で重要な実験参加者であるが,東京都内の療育施設の協力が得られ,今後も20名程度の協力者が見込まれることから,おおむね順調と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後については,開発中のゲームの最終版を用意して,実際に児童にプレーしてもらうことでその効果の検証を行う予定である.また,効果の検証にはワーキングメモリの測定自体がきちんと行われなければならないが,児童のためのワーキングメモリ検査として何を使用し,どのように評価するかについてはまだ検討が必要であるので,それについては心理学を専門とする研究者と相談していく必要がある.
ところで,今年に入って大きな問題となった新型コロナウイルスに関係し,出張などの異動の制限,児童の療育施設への立ち入り制限など,研究遂行上大きな障害が想定される.現状のさまざまな規制の中で実施可能な実験案を協力機関と相談の上決める必要があり,2020年度前半は,その検討にかなりの時間と労力を要するものと心配している.今後の重要な検討事項である.
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Causes of Carryover |
前述の通り,ワーキングメモリ訓練ゲームの開発において,当初想定していた2画面構成のN-Back課題風のものについて見直しの必要が生じたため,開発が長期化し,当初予定していた協力機関での実験用の旅費の使用ができなかったことによるものであり,現在プロトタイプの開発がほぼ終了しているので,2020年度で実験を行う予定であり,問題は無いと考えている.
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