2019 Fiscal Year Research-status Report
対話システムに名推理をさせるための誘導質問術に関する研究
Project/Area Number |
19K12073
|
Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
菱田 隆彰 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (30329627)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | イベント履歴 / 雑談 / 対話戦略 / 年齢推定 / 人間関係推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の研究目的は,雑談型対話システムにおいて会話の流れを戦略的に捉え,相手の話す内容を誘導するように会話を進め,相手の興味を推察できるように情報収集を進める手法を検討し対話システム上での実装を試みることである.相手の本心を知ることで、相手を満足させるサービスの実現を目指す.要点は人工対話による雑談において話題をユーザごとにカスタマイズするための情報収集の困難さを解消することにある.具体的には雑談型対話に有用な情報支援技術,対話戦術のモデル化手法,対話者情報の収集方法,対話エンジンとインターフェイスなどの確立,実装を行う. 今年度は,主に3つのテーマについて着手した.一つは対話内に含まれる歴史的な事象からその発生日時を変換する手法の検討である.これはイベント履歴収集システム(Historical information Acquisition System, 略してHAS)と名付け試作し,迂遠な対話の中に含まれる事象から対話者の年齢が推定できることを示した.対話の効率化のための情報支援技術の一つとなる.二つ目は,チャットツールで行われる対話から感情的なフレーズや業務的なコメントなどの分析を行いグループのメンバー内の人間関係図を生成する仕組みの構築を行った.LINEやChatworkなどで実際に行われた対話から現実に沿った関係図が作成できることを示した.チャットツールによる対話での情報分析の基盤となる.三つ目は2台の全天球カメラを用いてカメラの全周囲の距離推定を可能とするシステムの構築を行った.また,音声と協調することでカメラの位置から距離を踏まえた音声提供ができることを示した.遠隔での対話を行う際のインターフェイスの基盤となる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の研究において,主題としては対話戦術として年齢推定に着目し,迂遠な対話の中から年齢を推定する手順を検討した.年齢を推定するためには対話内において本人が記憶している時事から算定することになるが,時事から実際の発生年月を得ることは難しく,その情報を支援する仕組みの提案が必要であった.我々は出来事の情報支援システムの提案と試作,簡易的な対話ツールの上での実証を行い,提案システムが年齢推定のための雑談において一定の効果があることを示すことができた. また,昨今スマートワーク,リモートワークなど職場環境の効率化が注目を集めており,業務での対話ではチャットツールが多く使用されるようになった.計画当初は音声インターフェイスによる対話を主として想定していたが,今後はこれらのツール上での対話についても考慮する必要と判断したため,チャットツール上の対話の分析を行う仕組みの構築を行った.実際の対話システムにおいてはこれまでの研究の成果を応用し,感情的なフレーズなどから人間関係の把握を可能とする方法を提案することができた. もう一つの検討事項として,対話の際の周辺環境の認識も必要であると考え,全天球カメラを利用した対話環境の認識方法の検討も始めた.まだ,基礎的な部分が多いが今後対話時の状況分析に利用したいと考えている. 雑談対話から必要な情報を得るために検討するべきことは多いが,今回計画していた内容については概ね想定された進度で結果が得られていると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については,令和元年の結果をよく精査し提案したシステムの精度向上のための手法の検討を行いたいと考えている.イベント履歴収集システムについては検討してきた情報収集方法では取得できない情報の新たな収集方法の提案が必要であると考えている.また,全天球カメラを利用した対話環境の認識については精度良く推定を行う方法の検討が必要となっている.加えて主題の一つとして雑談内容を容易にカスタマイズ可能な対話エンジンの検討も進めたいと考えている.雑談を行う際には対話者に与える印象が大事であり,相手の感情・気分を考慮した文章生成を行うことのできる仕組みの提案を検討したい. 懸念事項としては,今年度は新型コロナウイルスの状況もあり,被験者を集めて対人的な検証を行うことが難しくなることが予想される.対策は難しいが,既に研究対象としてはチャットシステムなども念頭に加えたため,直接対面する対話については繰延べ,遠隔地での対話を想定した検証から優先的に行っていくことで対処が可能であると考えている.遠隔対話において,そのための手法やシステムの提案も加えて検討したいと思う.
|
Causes of Carryover |
今回繰延になった金額は本来研究発表を行う際に必要な旅費が余ったものとなります.令和元年度後半にかけて研究発表をいくつか行う予定でしたが、新型コロナウイルスの広がりに伴って,発表会がオンライン開催に変更となり開催地への移動がなくなってしまったため旅費として確保していた予算が残ってしまいました.年度の終わりに近い時期の決定であったため計画内の他の支出の検討も困難でした. 令和2年度については,機材などの購入計画について大きな変更はありませんが,機材の高騰によって物品購入にかかる費用が増えている点やその他の支出が想定以上に必要になっている点など当初の予定と違ってきている点がありますので,それらを含めた計画を立てたいと思います.また,旅費については平成元年度同様,大会自体の実施形式の変更などが急遽発生する可能性が高いため,状況を良く把握しながら支出を計画したいと思います.
|
Research Products
(6 results)