2021 Fiscal Year Research-status Report
音場の逆フィルタ処理において音響伝達特性の影響はどこまで補正されるべきか?
Project/Area Number |
19K12079
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
立蔵 洋介 静岡大学, 工学部, 准教授 (30372519)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 音場制御 / 逆システム / 室内音響伝達特性 / 聴感の自然性 |
Outline of Annual Research Achievements |
逆システム型音場制御に基づく音空間の個人化では,他の体験者に干渉させることなく,自分の聞きたい音を聴取することができる.しかしながら,音が室内を伝播する際に生じる反射や回折などの影響を除去する操作を行っているため,逆システムが最適に動作していないと再生音の品質が劣化する.本研究では,逆システム型音場制御において最適な受聴点の位置で合成された音の品質に影響を与える要因を調査し,体験者が違和感なく自然なものとして再生音を享受するための条件を解明することを目的としている. 3年目は,前年度に引き続いて新型コロナウイルス禍の状況を考慮し,換気の難しい室内での主観評価実験を行うものではなく,数値シミュレーションや室内の影響を受けない程度の少人数による評価実験を中心としたものに研究計画の一部変更を行った.具体的には,スピーカ配置間隔の変動に対する制御精度の調査を行ったところ,スピーカをできるだけユーザに近い位置に配置して再生音量を小さくすると,残響時間の実質的な短縮となるために再生音の品質保持につながることがわかった.加えて,音場制御システムのスピーカから再生される音以外の自然環境的な音と人工的に合成された音がどの程度自然に混じり合って聴取されるかを検討するための基礎実験として,骨伝導イヤホンによる位相干渉に関する主観評価実験を実施した.その結果,耳から聴取される気導音と骨伝導音が逆相である場合,位相干渉によって知覚される気導音が低減されることがわかった.また,音響伝達特性のインパルス応答同時的測定手法について,中核を担う音源分離アルゴリズムの改良を行ったところ,測定精度を保持したまま測定を高速化できることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続いて新型コロナウイルス感染症の影響などのために,当初予定していた検討をすすめることができておらず,進捗としては遅れているを言わざるを得ない.音響伝達特性の各パラメータの影響を個々に検討する計画であったが,残響に関しての検討にとどまっている.しかしながら,残響の影響を減らすには,逆システムを通す前にスピーカなどの器具の配置位置や受聴位置を工夫すればよいことがわかったことは,自然な聴取感を得られる音場制御システムの実現につながる大きな成果である.2022年度はこれまでよりはコロナ禍の影響は小さくなる期待があることから,研究計画を1年延長することで,残響以外の音響伝達特性のパラメータについて,個別に検討を行う計画である.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,過去2年度に比べればコロナ禍の影響は相対的に小さくなり,コロナ前の日常生活に近い状態となることが期待されることから,研究計画を1年延長して音場制御システムにおける再生音の自然性を担う要因を解明したい.そのためには,室内伝達関数のインパルス応答やそれを利用した逆システムの設計において,残響以外のパラメータが再生音にどのような影響を与えているのか,数値計算と聴取実験の両面から検討をすすめていく.
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため,国内学会・国際会議は現地開催ではなくオンライン開催であったため,旅費の支出が全く無かったことが次年度使用額の生じた大きな理由である.また,当初予定していたほどには研究計画が進展しなかったことも一因である.そこで,当初の研究計画では研究期間は3年であったが,研究計画を再編して1年延長することとした.2022年度は多くの学会などがオンライン実施から対面形式での実施に戻ることが見込まれることから,次年度使用額は成果発表・周辺調査のための国内出張旅費を中心とする予定である.
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