2021 Fiscal Year Research-status Report
ユーザ誘引のための複数仮想エージェントビヘイビアによる集団状況生成モデル
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19K12090
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 直人 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任助教 (40836714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黄 宏軒 福知山公立大学, 情報学部, 教授 (00572950)
米澤 朋子 関西大学, 総合情報学部, 教授 (90395161)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 集団エージェント / 集団状況生成 / 行動変容 / グループ学習環境 / トレーニング / 内部状態 / 顔表情 / メタバース |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19により社会状況が大きく変容する中,不特定多数が交流する3次元バーチャル空間,いわゆるメタバースにも注目が集まり,人間と仮想エージェントの境界が曖昧になる世界が想定される中,仮想空間における不特定多数の他者集団の行動モデルについて検討する本研究の重要性はさらに高まることが想定される. 本年度も,教育環境や社会活動全般の遠隔へのシフトが進むなかで,実空間で人間を対象とした実験が大きく影響を受けた.しかしながら,仮想エージェントの特性を活かすことによって,仮想空間におけるエージェントの行動に対する人間の知覚や内部状態への影響の評価に関する複数の実験を実施することができた. 人間と集団エージェントとのインタラクションにおける他者情報伝達における視覚・聴覚などの様々なモダリティや,他者の顔つき,表情などの外観,態度,性格や立場などの属性を変数とした実験を行い,人間の内部状態に影響を与える他者要素を幅広く抽出することができた.これは,本研究において当初から想定されている集団エージェントの様々な活用シーンに最適なエージェントの構成要素を選択できる点で重要である. 具体的な実施内容としては,グループ実習における他者の行動とその影響について,行動の速度や効果音など様々な検証を行い,結果として人間の競争に影響を与える要素を見つけた.また,作業雰囲気作成手法として個と全体のエージェントのふるまいを生成するモデルを作成した.他にも,多人数のエージェントの様々なアクティビティを活動量の平均と分散および全体の人数で正規分布状にバリエーションをつける手法を検討した. さらに,本研究成果の応用的な展開先として,現代の社会的課題に照らした高齢者の認知・フィジカルトレーニングの支援やコーチングについて,これまでの本研究における知見を活用する形で議論し,一部の評価実験を実施できたことも非常に意義がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
引き続きCOVID-19の流行により,実験被験者の募集や実験環境・実験体制の構築に支障が出たために研究計画に遅延が生じたが,遠隔実験環境の構築や,感染対策を実施した上での実験ノウハウを蓄積することにより複数の実験を実施し,さらに複数の研究成果を報告した. グループ実習環境における他者の行動とその影響については,複数の集団エージェントが作り出すそれぞれの雰囲気生成および全体としての雰囲気生成について検討し,成果を上げた.またエージェントの個別の表現する内部状態の種類や応用先を広げた.一方でそれぞれのグループ間の関係性や位置付け(ライバルなど)は考慮されていなかったため,今後の新規モデルにて検討したい. さらに,屋外広告環境における集団エージェントの行動が人間の歩行行動を変容させる効果があることを示した成果を発表した.同様に,教育・コーチングに関する実世界をターゲットとした検証では,高齢者の認知機能と身体機能のマルチタスクトレーニング中に,認知課題の刺激として,複数の他者エージェントが笑う様子を提示することでトレーニングのモチベーション要素に寄与することが示された. さらに,研究成果の社会応用を含めた今後の展開について検討した.分担者の所属機関に近い福知山市旧夜久野町は高齢化が特に深刻な地域の一つであることから,これまでに開発してきた対話エージェントプラットフォームの高齢者支援への活用に取り組んだ.自治体と協議し,すでに開発されていた全身の主な筋肉を使いながら,誰でも行える12種類の動作からなる体操プログラムを,人間のインストラクターの代わりに,パソコンやタブレット端末を介して体操の講習を行うことができる仮想インストラクターを開発することにした.今年度はモーションキャプチャーで体操動作のモーションデータを収録し,看護師のエージェントがそれを実演するモックアップシステムを開発した.
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19により社会状況が大きく変容し,仮想空間における不特定多数の他者集団の行動モデルに関する研究の重要性が高まる一方で,社会活動や交流の場は遠隔へのシフトが加速している.多数の人が共有する共同空間等の実世界環境における実験等の制約が今後も継続することが考えられる中,一部の実世界環境を対象としたテーマを仮想空間ベースにシフトすることにより,より効果的かつ意義のある研究を継続することができると考えている. 屋外広告環境に関しては,VRを活用した没入型実験環境を構築し,ユーザの行動や視線方向の検出や,実験的な統制が行いやすく空間的制約が少ないという利点を活かし,没入型仮想空間における屋外広告等に対する集団エージェントの感情的行動やリアクションが,ユーザの注意や対象物のイメージに与える影響を評価する. グループ実習環境では,未検証部分の実施や追加検証を行うと同時に,集団エージェントの新規のモデルとしてソーシャルバランスを適用した長期的な集団間・個人間の雰囲気生成モデルを検討する.また,これまでの実験で得られた結果を国際会議や論文誌等に投稿し,成果化を加速する. 研究成果の社会応用に関しては,高齢者の健康維持のための仮想トレーニングジム環境の検討に向けて,利用者の自宅でも簡易に設置ができるように考慮し,ウェブカメラを通して,体操学習者の動作を取得してから学習の度合いを評価する手法の開発を行う.また,評価結果を踏まえて仮想インストラクターが適切に教示を行う自律対話モデルを開発するために,遠隔からキャラクタを操作して利用者に教示を行う対話実験を行う.
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Causes of Carryover |
COVID-19により生じた一部の実験の中止や規模縮小による研究計画の遅延のため. 実験方法を変更したうえで,次年度に追加実験を実施する予定であり,実験機器の調達,実験場所の手配,実験被験者への謝金にかかる費用として使用する予定である.
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Research Products
(25 results)