2020 Fiscal Year Research-status Report
複雑時系列からの決定論的支配方程式の抽出手法に関する研究
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19K12111
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
日野 英逸 統計数理研究所, モデリング研究系, 教授 (10580079)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 機械学習 / ダイナミクス抽出 / 時系列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,時系列観測データから,システムの時間発展を支配する方程式あるいはモードを抽出・同定する方法論の開発を目指すものである.昨年度の調査及び応用サイドからの要請を受けて,2年目である本年度には,推論の確信度を定量的に評価できるダイナミクス推定の方法論の開発に取り組んだ.具体的には,流体解析の分野で広く用いられている動的モード分解に新しい確率的生成モデルを導入することで,動的なシステムの大部分を記述するモードの自動抽出方法の開発を行った.従来の動的モード分解アルゴリズムの自然な生成モデルを考え,ベイズ推論の枠組みに帰着した.その際,一般には非常に高次元になりうる局外パラメタの推定を伴う.そこで,局外パラメタに適切な事前分布を導入して積分除去(周辺化)することで,入力次元に依存しない定式化を進めた.局外パラメタの事前分布は適切に選択しなければ妥当な結果が得られない.そこで,近似ベイズ推論の方法として広く用いられている変分行列分解を観測行列に適用し,そこで得られた事後分布を局外パラメタの事前分布として採用した.これにより,局外パラメタの積分除去のために妥当な分布を得られるのみならず,変分行列分解は観測データに欠測がある場合にも適用可能であることから,一部分が未観測であるようなデータに対しても動的モード分解を適用できることとなった.これは実問題においてセンサの不具合などでデータが欠損することがあることを考えると,動的モード分解の適用可能性を大幅に広げる重要な結果である.本成果は,人工知能分野のトップカンファレンスであるAAAI2021にて発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,課題1:背後にあるシステムが有するモードの単離,課題2:システムの本質的な変数の抽出,及び課題3:抽出した変数に関する系の支配方程式の同定の3課題から構成される.課題1は同一の時系列内におけるモードを典型部分時系列として抽出する問題と,多数の時系列のグルーピングという問題から構成されるが,それぞれの問題に対して,基本的な手法の実装と,実データでの評価を進めている.課題2については,高次元データの簡約化という観点で時間発展を線形近似してモードを抽出する手法をベイズ統計の観点から定式化することに成功した.課題3は,課題1,2の結果を受けて実施するものであり,本年度まで進めた課題1,2の研究を受け,来年度に集中的に実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
課題1:背後にあるシステムが有するモードの単離,課題3:抽出した変数に関する系の支配方程式の同定に関する研究を継続する.課題1については,生物学由来のデータに加えて,ものづくりのプロセスモニタリングから得られる時系列データへの適用も視野に入れて,時系列の特性に応じた適切な手法の調査を行う.その上で,実データに適切な手法を適用することで,課題であるモードの単離と特徴的なパターンの抽出を検討する.この実データ解析を通して,既存手法の限界を明らかにし,実用の供する手法の開発に着手する.課題3については,本年度に開発したベイズ的動的モード分解に基づき,低次元の主要なモードにおける支配方程式の抽出を試みる.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で旅費を使用しなかった.次年度の旅費あるいはオンライン学会参加費として利用する.
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