2019 Fiscal Year Research-status Report
利用者間合意形成における情報提供と効用をトレードオフする非集中型最適化基盤
Project/Area Number |
19K12117
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
松井 俊浩 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60437093)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | マルチエージェントシステム / プライバシ / 合意形成 / 非集中型最適化 / 多目的 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,利用者のプライバシ情報を活用し,利用者間の利害を調整するサービスにおいて,利用者が提供するプライバシ情報と,それにより得られる効用を調整する情報処理基盤の構築を目的とする.利用者間の意思決定や共同作業の調整を,多目的最適化問題として解決する手法に,プライバシのコストの概念を融合して発展させ,1) プライバシ情報の公開と見返りとして得られる利益とのトレードオフを最適化する指標,2) 情報公開の程度を調整する最適化手法,3) 利用者がトレードオフを把握・学習するための対話的環境,分析環境の開発を目指す. 初年度においては,基礎的な解法の枠組みの検討を進めた.各エージェントの意思決定と,それらの関係を変数と非対称な関数により記述する離散最適化問題を拡張し,エージェントの変数の値域の情報公開がエージェントのプライバシ情報の漏洩コストを伴う問題を定義した.この問題の解法として,各エージェントが段階的に 変数値とそれに関する非対称な関数の効用値を公開する手法について検討した.調停者と各エージェントからなる,反復的な確率的局所探索を伴う交渉により,合意を形成する過程を構成し,各エージェントの情報公開の基本的な戦略について実験的に分析した.これにより,各エージェントが,自身の局所的情報のみを考慮する戦略よりも,他のエージェントの情報公開の状況を考慮する戦略により,各エージェントの情報公開の程度の比率を,系全体で平準化する効果があることを示した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画における,基礎的な問題の設計と,解法の枠組みの検討を進め,基礎的な知見を得た.調停者とエージェント群からなる,局所探索に基づく協調の枠組みと,エージェントの協調の程度による系全体の情報の漏洩の抑制の基本的な挙動を確認した.利用可能な情報を抑制する問題設定による解法の制限事項の分析と,その条件における解法の検討の結果は,今後につながる一定の成果と考えられる.また,関連する検討として,系の公平性を考慮する最適化指標の適用範囲についても模索し,強化学習において行動系列における行動コストの平準化を考慮する手法について検討した.結果からは従来の最適化の指標を用いる場合と異なる効果が得られる場合があることと,より一般的な状況における課題が示された.これらにより,概ね順調な進捗であると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
検討した問題設定および解法には,さらに検討の余地があると考えられる.検討した交渉の枠組みは比較的簡素であり,エージェントが扱う情報と戦略がより実際的,合理的となるように問題の設計を含めて改善することが望まれる.参加者間の公平性などの指標の設計と,最適化への明示的な導入が課題として挙げられる.より非集中型の解法の適用の適用も挙げられる.これらについて引き続き検討を進める.また,情報の公開は不可逆であり,交渉の過程での情報の公開では漏洩の程度が許容できない場合もありうる.より厳格に漏洩を抑制するために,秘密計算などによりあらかじめ候補となる解を非公開のまま求めたうえで,合意に関する情報を公開するアプローチについても検討する.これらを基に,評価ツールとしての利用方法の模索も進める.
|
Research Products
(6 results)