2020 Fiscal Year Research-status Report
非同期で不均一なセルオートマトンを計算資源として用いる
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19K12143
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
浦上 大輔 日本大学, 生産工学部, 准教授 (40458196)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | セルオートマトン / リザバーコンピューティング / 学習システム / 非同期 / 時系列データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は、非同期調整セルオートマトン(AT_ECA)を用いたリザーバーコンピューティング(RC)が、時系列データの学習において高い学習能力を有することの理由・メカニズムを明らかにしたことである。明らかになったメカニズムや特性は以下の2つである。1つ目は、AT_ECAを用いたRCが時系列データを学習している際に、そのリザバーの状態を解析した結果、明らかになったことである。解析にあたって、リザバーの状態を可視化するために新たな解析指標を考案した。解析の結果明らかになったことは、AT_ECAを用いたリザバーに学習パターンが入力されているときは常に新しい状態が生成され続け、ディストラクタとなるパターンが入力されているときには同じ状態を維持し続けるということである。さらに、学習パターンを再生する段階では、再び新しい状態が生成されるということも明らかになった。ここで明らかになった性質は、学習パターンの識別、維持、想起という3つのフェーズと照らし合わせて理にかなうものであることは明白である。したがって、AT_ECAの特性が学習能力の向上に関与するメカニズムの一端が明らかになったと結論できる。2つ目は、AT_ECAそれ自体の性質に関することで、AT_ECAは万能性と効率を両立させる計算資源であることが明らかになった。この解析では、まず、通常のセルオートマトンである初等セルオートマトン(ECA)において万能性と効率はトレードオフの関係にあることを数値的に示した。その上で、そのトレードオフ関係をAT_ECAが上回る万能性と効率を発揮することを明らかにした。万能性と効率の関係は計算能力の根幹に関わることであり、本研究の研究対象である非同期で不均一なセルオートマトンの可能性を多い期待させるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画は大まかにいうと3段階に分けられる。第1段階はAT_ECAを用いたRCの学習能力、その能力がより発揮される学習対象や環境を明らかにすることで、第2段階はその高い学習能力が何に由来するものであるか、そのメカニズムを明らかにすることである。第1段階は前年度に概ね完了しており、本年度の研究によって、上記にも記載されているとおり第2段階までが概ね完了している。つづく第3段階は、ここまでの研究成果に基づいて学習対象と学習システムをより一般化、現実化することである。これらに関しては本年度に一定の成果が得られるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の主たる課題は、学習対象と学習システムの両面においてより一般化・現実化することである。ここで、学習対象の一般化・現実化とは、これまでの研究では学習の対象となる時系列データは主に5ビット・タンスと呼ばれる離散値で人工的な時系列データを使用してきたが、それを連続値の音声データなどに置き換えることを意味する。また、学習システムの一般化・現実化とは、本研究の学習システムの中心部分であるセルオートマトンを、より結合の自由度が高いブーリアンネットワークや連続の状態値をもつリカレントニューラルネットワークなどに置き換えることを意味する。これまでの研究で明らかになったセルオートマトンの非同期性や不均一性に内在する計算資源としてポテンシャルや、それらを局所的に調整するメカニズムなどは、これらのシステムにも応用可能であると推察される。これらのことを実現するためには理論的、数学的、アルゴリズム的な研究に加えて、より大規模な数値シミュレーションが必要であるため、その環境構築から取り組むことによって、研究を推進させる予定である。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに研究費を使用している。前年度未使用であったPC購入費と英語論文の校閲費用は計画通り本年度に使用した。一方、本年度は新型コロナの影響で、研究発表用と出張費とそれに関連した予算が未使用であった。これらについては次年度に使用する可能性もほとんど見込まれないため、数値シミュレーション用のPCの購入に充てて、研究の効率化は図ることを予定している。
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Research Products
(2 results)