2021 Fiscal Year Research-status Report
ネコの歩行における小脳による歩容適応メカニズムの四足ロボットを用いた構成論的理解
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19K12169
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
木村 浩 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 教授 (40192562)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | split-belt adaptation / early adaptation / late adaptation / CPG & phase transition / constructive model / spinal cat model / thalamic cat model |
Outline of Annual Research Achievements |
前年(2020)度に有効性と妥当性を確認した脊髄ネコモデルに,新たに小脳モデルを組み合わせた視床ネコモデルを用いて四脚ロボットのスプリットベルト上歩行実験を行い,その有効性と妥当性を確認した. 視床ネコのスプリットベルト上歩行ではearly adaptaionとlate adaptationが観察され,従来は前者は脊髄レベルの後者は小脳レベルでの適応であると考えられていたが,脊髄ネコモデルを用いた実験ではearly adaptationと同様な支持脚期間と遊脚期間の変化は生じるものの,その変動(fluctuation)は収束しないという問題点があった.そこでearly adaptaionでも小脳レベルの適応が働いているという仮説を立て,それをquick adaptationと呼び,late adaptationでの小脳適応をdelayed adaptationと呼ぶことにした. 我々はquick adaptationは小脳が脚先の前後速度を計算することで脊髄ネコモデルに介入し,結果として速いベルト上の脚と遅いベルト上の脚の着地タイミングを調整することで支持脚・遊脚期間の変動の収束を図るものとした.同様な変動の収束は視床ネコのearly adaptationでも観察される.次にdelayed adaptationは2019年度にすでに提案した各脚の歩幅目標値の逐次的な調整と,その結果としての離地タイミングの調節とした.これは小脳レベルでの長期学習機能に相当する. この新たに提案した視床ネコモデルを用いて実験を行い,視床ネコと同様なearly daptationとlate adaptationの実現に成功し,構成論的に有効な視床ネコモデルを提案することができた.また,early adaptaionでも小脳レベルの適応が働いているという仮説の検証を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来研究として青井らによる二足歩行ロボット(2015)や四足ロボット(2021)の数理モデルを用いたスプリットベルト適応の実験において,early adaptation, late adaptation, after effectが再現されている.そこでは従来の仮説と同様に,early adaptaionは脊髄レベル,late adaptationは小脳レベルでの適応としている. 本研究では構成論的モデルを用いて同様なスプリットベルト適応の再現を目指しており,脊髄ネコモデルを用いた実験においてearly adaptationで変動が収束しない結果を得た.これは柳原らの小脳機能を抑制した視床ネコ実験でのearly adaptationに見られる変動が収束しない現象と類似している.そこで本研究では小脳適応としてquick adaptation機能を追加し,柳原らの健常な視床ネコ実験でのearly adaptationと同様の結果を得た.この結果は従来の仮説に基づいた研究をより発展させ,視床ネコのスプリットベルト適応での脊髄レベル適応と小脳レベル適応の役割をより明確にした点で,構成論的モデルを用いた手法の有効性を示していると考えられる.さらに小脳レベルでの長期学習機能としてdelayed adaptationを用いることで,視床ネコのスプリットベルト適応と同様なlate adaptationを再現した. 2022年度は現在,視床ネコモデルのより詳細な検討を行っており,さらにafter effectの再現を行い,本研究の最終目的の達成を目指す段階にあり,おおむね順調であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 提案した視床ネコモデルの妥当性をより詳細に検討する. (1-a) このモデルの基本は脊髄ネコモデルでの,脚負荷を用いた支持脚・離地タイミングの調節と,そこで用いられる閾値に脚先位置を組み込んだことである.除脳ネコを用いた実験結果からの神経生理学上の知見として,支持脚・離地タイミングに脚負荷と脚先位置が重要であることはよく知られているが,両者の関係は不明である.本研究では両者を1つの式に組み込み簡略化を図っているが,今年度はその妥当性についての検討を行う. (1-b) 小脳適応に瞬間的なquick adaptationと長期抑制としてのdelayed adaptationの二つを提案した.神経生理学において後者についてはよく知られている.今年度は前者についていくつかの神経生理学的知見と照らし合わせ,その妥当性について検討を行う. (2) これまではnormal beltからsplit beltへの遷移時の適応についてモデルの提案と実験を行った.今年度は,視床ネコにおいてsplit beltからnormal beltへの遷移時に現れる後遺症(after effect)が,同一のモデルで再現できるかについて実験を行い,提案した視床ネコモデルの妥当性について検討を行う.
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Causes of Carryover |
2020年度は,下位脊髄モデルと上位小脳モデルを組み合わせロボットの四脚実験結果を得たが,下位モデルの不備のため結果は不十分であった. 2021年度は脊髄ネコモデルを再構築し脊髄ネコの後二脚実験をロボットの後二脚実験で再現した.この新しい脊髄ネコモデルを用いたロボットの四脚実験では,early adaptationにも小脳が関与している知見が得られた.新たに提案した小脳モデルを組み合わせた視床ネコモデルを用いたロボットの四脚実験において,視床ネコ四脚実験のearly adaptationとlate adaptationの両方について同様な結果を得た. 次に重要な「後遺症(after effect)」の再現課題に2022年度は取り組み,最終的に総合的な評価を行う.
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Research Products
(2 results)