2021 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイムイメージングから構築するがん細胞動態の高精度予測モデル
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19K12207
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
小田切 健太 専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (20552425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 弘弥 日本医科大学, 医学部, 准教授 (30824833)
藤崎 弘士 日本医科大学, 医学部, 教授 (60573243)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞集団動態 / 数理モデル / リアルタイムイメージング / ディープラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、実験で得られたがん細胞動態の計測データを利用して、高精度予測が可能な細胞集団動態の数理モデル構築が目標である。そのために、実験による細胞動態のデータ計測、細胞動態の数理モデル構築、実験データを利用した数理モデルのパラメータ推定の3段階の研究を組み合わせて、研究を効率的に進めている。当該年度は、実験によるデータ計測と数理モデル構築に加えて、パラメータ推定のための準備段階に当たる研究を進めていった。 実験については、喉頭部粘膜がん細胞(KB細胞)をⅠ型コラーゲンゲル薄層(φ13 mm)に播種(20,000 cells)し、サブコンフルエントの状態でアガロースゲル(100 μL)を乗層したところ、増殖が抑制された。がん細胞の特徴として、単層でコンフルエント過剰になっても接触阻害を起こさず、分裂・増殖を続ける。しかしながら、アガロースゲル圧刺激によって、遊走・増殖が抑制されたことから、圧刺激によって細胞間接触阻害機構が働いたと考えられる。 数理モデルについては、細胞動態の数理モデルの構築のために、創傷治癒過程を記述するより精緻な数理モデルの構築を進めていった。これまでの研究で、圧刺激を加えた際に生じるシグナル物質の影響をあらわに取り入れたモデルを構築していたが、本年度は接触抑制の効果を採り入れたモデルへの拡張を行った。このモデルを用いた数値計算を行った結果、これまでと比べて特に創傷治癒の途上段階の状況をよりよく再現した。 パラメータ推定に関しては、上記で得られた創傷治癒過程の数理モデルによる数値計算結果から得られた時系列データを用いて、ディープラーニングによる特徴的な細胞ダイナミクスの抽出を行った。その結果、創傷治癒が起こらない状況で引き出される自由度は時間変化をほとんどしないが、創傷治癒が起こる状況では抽出されるいくつかの自由度が特徴的に時間変化することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験に関しては、喉頭部粘膜がん細胞(KB細胞)における細胞間接触阻害機構の理解が進んでおり、研究はおおむね順調に進んでいると言える。一方、数理モデル構築およびパラメータ推定に関しては、創傷治癒実験の結果をより正確に表現するような数理モデルの構築が遅れてしまっていた結果、モデルを用いた数値計算結果による時系列データの取得が遅れてしまった。そのため、パラメータ推定については現在準備段階にあるため、研究はやや遅れている状況である。これらの状況を総合的に判断して、研究の進捗状況はやや遅れている、と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
実験については順調に進んでいるため、今後は細胞外カルシウム濃度を変えた場合の影響を比較し、圧刺激、細胞内カルシウム流入、接触阻害の関係を検討し、現象を捉えることを目指していく。 数理モデル構築については、実験における圧刺激の定量的なデータと接触抑制の効果をより直接的に対応させるために、各細胞にかかる実効的な力のより具体的なモデル化を目指す。また、現在のモデルでは細胞分裂の効果は採り入れていないが、細胞分裂と接触抑制による分裂の抑制効果を採り入れたモデルの構築を行っていく。 パラメータ推定に関しては、数値計算から得られた時系列データの解析を進めていくとともに、実験で得られた細胞動態の画像解析も進めていく。そのうえで、両社に共通する特徴的な細胞ダイナミクスを抽出することで、構築した数理モデルに基づくパラメータ推定を随時進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の拡大のため、研究計画当初に予定していた学会参加等の出張が全てできなくなり、旅費が残ってしまった。今年度も、海外国内ともに出張に行けるかどうかは不透明な状況であるため、もし旅費として使用できない場合には物品費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)