2023 Fiscal Year Research-status Report
高分節型RNAウイルスにおけるパッケージング・シグナルの同定
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19K12221
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
鈴木 善幸 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70353430)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | パッケージング・シグナル / 高分節型RNAウイルス / ロタウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、分子進化学的・生命情報学的手法をもちいて、高分節型RNAウイルスであるオルソミクソウイルス科、レオウイルス科に属するウイルスの各ゲノム分節に存在するパッケージング・シグナルを同定することを目的としている。2023年度には、2022年度に発見された、VP4分節の系統樹において哺乳類ロタウイルスとクラスターを形成する鳥類ロタウイルスRVA/Pheasant-tc/GER/10V0112H5/2010/G23P[37]_JX204814とRVA/Pheasant-wt/HUN/216/2015/G23P[37]_KU587856について、起源に関するより詳細な解析を行った。VP4のアミノ酸配列をVP8*とVP5*の領域に分け、VP4全体、VP8*、VP5*のそれぞれの領域について最尤法と近隣結合法を用いて系統樹を作成し樹形を比較した。その結果、カモメロタウイルスに由来する遺伝子型P[39]は、VP4全体、VP8*、VP5*いずれの系統樹においても鳥類ロタウイルスと哺乳類ロタウイルスの外側に位置したことから、P[39]は起源が古く、カモメロタウイルスは遺伝子再集合によって哺乳類ロタウイルスまたは鳥類ロタウイルスからP[39]のVP4分節を獲得したと考えられた。一方、キジロタウイルスに由来する遺伝子型P[37]は、VP4全体とVP8*の系統樹では哺乳類ロタウイルスとクラスターを形成したものの、VP5*の系統樹では残りの鳥類ロタウイルスとクラスターを形成した。このことから、キジロタウイルスは遺伝子再集合によって哺乳類ロタウイルスからP[37]のVP4分節を獲得したのではなく、VP8*領域が収斂的に哺乳類ロタウイルス様に進化したか、遺伝子内組換えによりVP8*領域のみを哺乳類ロタウイルスから獲得した可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度までにインフルエンザC型・D型ウイルスにおけるパッケージング・シグナルの同定を完了し、2021年度よりあらたに始めた哺乳類ロタウイルスと鳥類ロタウイルスにおけるパッケージング・シグナルの解析においては、2022年度に思いがけず遺伝子再集合のような痕跡を発見することができたが、2023年度にゲノム分節内組換えである可能性が示唆された。哺乳類ロタウイルスと鳥類ロタウイルスにおけるパッケージング・シグナルの解析も2024年度には完了できる予定であり、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度には、哺乳類ロタウイルスと鳥類ロタウイルスの進化の過程でVP4におけるゲノム分節内組換えが起きたかについて決着をつける。さらに、哺乳類ロタウイルスと鳥類ロタウイルスにおけるパッケージング・シグナルを同定して本研究の全体を総括する予定である。
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Causes of Carryover |
【理由】 新型コロナウイルスのパンデミックにより、当初参加予定であった学会がリモートでの開催になったために旅費を使用できず、次年度に使用させて頂くこととした。 【使用計画】 研究成果を国内の学会で発表するための旅費として使用するとともに、研究室に入ってきた学生さんが使用するためのコンピューターなどの物品費として使用する予定である。
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