2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K12223
|
Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
杉崎 えり子 玉川大学, 脳科学研究所, 研究員 (20714059)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相原 威 玉川大学, 工学部, 教授 (70192838)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | シナプス可塑性 / アセチルコリン / 海馬 / CA3 / STDP |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶の過程で重要となるathorny細胞(錐体細胞)の特性とアセチルコリン(ACh)効果を海馬CA3で明らかにするため、本年度はスパイクタイミング依存可塑性(STDP)に対するACh効果の解明に取り組んだ。 まず、以前から広く報告されているthorny細胞(錐体細胞)のSTDPに注目した。感覚情報は海馬の歯状回からMossy Fiberを通ってCA3のthorny細胞に投射することから、Mossy Fiberに刺激を行いMossy FiberとのシナプスのSTDPをパッチクランプ法により観測した。その結果、細胞の発火タイミングに応じてSTDPは誘導され、長期抑圧(LTD)となった。そこで、postシナプス入力をバーストに変更して同様な実験を行ったところ、タイミングにかかわらずSTDPは強化傾向となり、長期増強(LTP)にシフトした。一方、エゼリンの投与によってAChを作用させると、ポジティブタイミングにおいてはSTDPが強化された。 次に、Mossy Fiberと直接接続を持たないathorny細胞においても同様な実験を行ったところ、ネガティブタイミングにおいてはLTDとなり、特定のポジティブタイミングではLTPが誘導された。postシナプス入力をバーストに変更してもSTDP変化は見られず、AChを作用させても同様に変化は見られなかった。 今回得られた結果とすでに知られているathorny細胞のバースト発火特性から、thorny細胞のSTDPは想起(ACh少)を促進し、athorny細胞のSTDPは過剰な促進を防ごうとする役割を持つことを示唆できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な入力刺激パータンによる応答評価を試みたため想定よりも多少時間がかかった。しかし、thorny細胞とathorny細胞におけるSTDPを観測することができ、その違いから記憶過程でのAChの役割を検討することができた。これらの状況から、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
STDP誘導プロトコル以外のシナプス可塑性誘導刺激を用いて、今までと同様にシナプス可塑性の評価を行う。これにより、Mossy Fiberシナプスが持つ学習ルールの検討が可能となる。また、CA3の抑制性細胞機能にも着目し、抑制性細胞応答をブロックしたネットワークでの実験結果と今までに得られた結果とを比較検討する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナの影響により旅費が発生しなかったこと、購入を予定していたラットを他実験と共有して使用することができたため、次年度使用額が生じた。また、次年度で計画している刺激プロトコルの変更実験に伴い、次年度使用額を使って刺激装置の購入を検討している。
|