2019 Fiscal Year Research-status Report
次世代オンライン議論支援システムにおける議論設計手法の研究
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19K12236
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
山口 直子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (20835996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 孝行 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50333555)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オンライン議論 / CSCW / 合意形成支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
実社会において様々な目的のもと日々多くの人々が議論に時間と労力を費やしている。本研究では、オンライン議論システムを利用し、議論を効率よく、参加者が納得する結論へと導く新たな議論設計手法の構築を目指している。本研究ではオンライン議論プラットフォームとして、自動ファシリテーション機能を搭載したD-Agreeを採用している。本研究にて取得したデータや知見を自動ファシリテーション機能の研究開発へ用いることにより、人工知能研究への貢献を果たす。 2019年度においては、D-Agreeを用いた次の3つの議論実験をおこなった。1.学術会議内市民講座(2019年4月、日本語)、2.人間系教育学習型共創ワークショップ(2019年9月、英語)、3.対立的議論(2020年1月、英語)。各実験の詳細と結果は次のとおりである。 1.学術会議内市民講座:医学会総会内市民講座にて、専門家と市民の相互理解を深めるプログラム設計を行った。本実験の結果として、各議論フェーズにおいて一定数の意見を収集したことを確認、また、参加者への事後アンケートでは75%以上がオンライン議論により知識が深まったとの回答を得た。 2.人間系教育学習型共創ワークショップ:対面式ブレインストーミング+D-Agree+ロードマップ作成、の構成でワークショップを実施した。議論ログの分析より、アイディアの意見数に関して、対面式議論と同等或いは優位の結果を確認した。 3.対立議論:議論形式は、議題選定(対面)+D-Agree討論+議論要約(対面)を採用。参加者の立場による意見内容の分類のため参加者の議題に対する立場を予め調査しD-Agree議論を実施した。本実験では参加者へアンケート調査を実施しており、現在D-Agree議論ログとともに結果分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度前半においては、議論に関する関連研究および文献調査を行い、D-Agreeの効果的な利用方法の検討を行った。また、過去に実施したD-Agree議論の議論内容の分析、参加者意見の集約を行った結果、第一段階として「共創的議論」および「対立議論」におけるD-Agreeを用いた議論設計に焦点を絞った。その理由として、共創的議論は参加者のニーズが高い議論形式であり、実社会応用を検討する上で欠くことの出来ない議論形式の対象であることを挙げる。また、2019年度時点では、IBIS構造に基づき働く自動ファシリテーション機能が、共創的議論において最も効果的な議論進行を行うコメントを生成すること確認しており、今後の実験手法、および議論設計の評価基準の検討に際し、ベースとすべき議論形式と捉えた。対立議論に関しては、共創的議論と同様に、参加者のニーズが高い議論形式であることが採用の第一の理由である。第二の理由としては、対立議論では、他の議論に比べ参加者の意見の変遷を明白に追うことが可能であり、議論設計や自動ファシリテーション機能の効果の観察を行うことに適しているためである。以上の検討を踏まえ、各議論形式において、初めに議論進行と実験設計の考察を目的とした日本語での予備実験をおこない、概要にて述べた議論実験をおこなった。 これらの研究活動は当初の計画通り進行している。但し、研究計画に挙げた「評価基準の検討」に関しては、議論形式を問わない統一的な評価基準の設定に当初の計画以上の時間を要している。これにより「おおむね順調に進展している。」と区分した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は当初の予想以上の実験フィールドを獲得することが出来、実験設定を中心に研究活動を行った。2020年度は2019年度の実験結果を基に、より実応用を意識した議論設計について追及していく。但し、昨今の感染症による人々の参集の制限による影響を受け、本研究において、対面式議論を含む実験は当面の間断念せざるを得ない。しかしながら、このような状況下においてよりオンライン議論の需要は高まるものと考える。そこで、2020年度においては、オンライン議論にて完結する議論設計の検討に注力していく。具体的には2019年度の実験において対面式議論で行っていた収束フェーズの議論を、オンライン議論上にて行う方法を検討する。つまり課題設定・発散・収束、この議論進行をD-Agree上で完結させる議論設計を考える。 実験に関して、2019年度においては、既存の自動ファシリテーション機能にてオンライン議論をおこなったが、2020年度には、効果的な議論進行法の調査、および、自動ファシリテーション機能の向上を目的として、人間のファシリテーションによる議論実験も実施す また、2019年度にやや遅れが生じた、議論設計の評価基準の検討に関しても、議論学や協調学習システム等の関連研究の調査を行い継続しておこなっていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、議論実験被験者への謝金の支払いが不要な実験フィールドを獲得することが出来たため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額については、2020年度予定の議論実験における被験者謝金へと充当し、より充実した実験データを獲得する。
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