2019 Fiscal Year Research-status Report
講義VOD上の議論における思考の発散・深化・収束を促す支援方法の研究
Project/Area Number |
19K12276
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
浅羽 修丈 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (50458105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斐品 正照 東京国際大学, 商学部, 准教授 (30305354)
西野 和典 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (70330157)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 事前学習 / レディネス / バズ学習 / 共同学習 / VOD / 思考の発散・深化・収束 / フレームワーク / オブジェクト指向 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度では,本研究のテーマである学習者の思考の発散・深化・収束を促す支援をどのような学習場面で行うのか,そして,その学習場面で扱う学習内容をどうするのかという2点について議論を重ねた. まず,学習場面については,授業中の学習支援としてガニェの9つの教授事象を基に議論を重ねたが,本研究では講義VODを想定しているため,むしろ,授業の事前学習や事後学習に焦点を絞るべきであるという結論に至った.そして,まずは授業の事前学習における思考の発散・深化・収束に着目して,本研究の構想を練ることになった. 上述の構想を練る中で,研究代表者らは「プレ・バズセッション」を構想するに至った.プレ・バズセッションとは,授業前に学習者同士が授業テーマについてバズ学習を行うことであり,その目的は学習者の“準備状態を高める”ことにある.ここでいう“準備状態を高める”とは,授業のテーマに関連するスキーマを活性化することと,知的好奇心を促進することを意味する.プレ・バズセッションは事前学習の理論であるため,2019年度では,同じ事前学習である予習や反転学習などの先行研究調査も実施し,本研究の位置づけを明らかにすることができた. プレ・バズセッションを構想すると同時に,本研究で扱う学習内容についても議論を重ねた.学習者の“準備状態を高める”ためには,授業テーマに関連する学習者自身の既有知識や経験を想起させたり,素朴な意見を考えさせたり,関連することを想像させたり,授業に対する見通しや結論を出させたりといった思考活動が求められる.これらの思考活動を活発にする学習内容として,問題解決に関連したフレームワークの学習と,プログラミング的思考,特に,オブジェクト指向の学習に注目することになった.2019年度では,これらの内容を学習する授業の構想や講義ビデオのストーリー展開などについて議論を重ねた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,思考の発散に関するシステムの検証と開発,および,評価実験と分析を行う予定であった.現状では,思考の発散に関するシステムを検証している段階ではあるが,システムの開発,および,評価実験と分析を行うまでには至っていない. その原因は,研究の構想を再検討したことにある.議論を重ねていく上で,学習者の思考の発散・深化・収束を促す方法をより高度に実現するためには,学習場面や学習内容をより洗練された形で具体化する必要があるという結論に至った.その結果として,「研究実績の概要」でも述べた「プレ・バズセッション」を構想できるに至ったわけだが,この構想を練るに当たっては多くの時間を要した. 「プレ・バズセッション」という新たな学習理論を構想したということは,それを実現するためのシステムを再検討する必要があるということである.すなわち,授業テーマに関連したバズ学習を事前学習として学習者に行わせ,かつ,高度なレベルで思考の発散・深化・収束を促進するためには,それを実現するために必要な仕組みや要件定義を行うことが重要である.現状では,「プレ・バズセッション」の構想までには至っているが,それを実現するためのシステムを再検討している段階である.また,システムの開発に至っていないということもあるが,新たな「プレ・バズセッション」という学習理論の学習効果をどのように検証するかについても再考が必要になったため,評価実験も実施できていない. しかし,「プレ・バズセッション」を構想できたことは,本研究にとっては大きな前進であると捉えることができる.時間は要したものの,当初の研究計画よりもより洗練された形で研究を進めることができると考えている.そのことも踏まえて,現在までの達成度を「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」や「現在までの進捗状況」でも上述したように,事前学習における学習者の思考の発散・深化・収束の促進が期待できる「プレ・バズセッション」を構想できるに至った.そのため,今後は,「プレ・バズセッション」を実現するシステムの開発を目指す. 新しいシステムの開発を進めるにあたっては,事前学習ということも考慮に入れて,スマートフォンやタブレット型PCといった携帯端末にも対応できるように設計する必要がある.すなわち,オンライン上で実現できる「プレ・バズセッション」システムを構築する必要がある.携帯端末も含めて多様な端末にも対応するべく,より汎用的なHTML5 + CSS3 + JavaScript + PHP 環境で開発を進めつつ,必要に応じて,随時,タブレット型端末を用いた動作確認を行っていきたい. 次に,「プレ・バズセッション」の学習効果を検証する実験を実施し,実験から得られたデータを分析する予定である.実験を計画するにあたり,学習内容を決定したり,講義ビデオのストーリーおよびその撮影を行ったりする必要がある.システム開発と並行して,これら学習実験の準備も進めていく.さらに重要なことは,「プレ・バズセッション」の学習効果といってもそもそもどのような学習効果に焦点を当てるべきか,焦点を当てた学習効果を検証するためにはどのようなデータが必要かといったことも十分に議論を重ねる必要がある. ただし,学習実験を実施するとなると,被験者を教室等の部屋に集める必要がある.現在の新型コロナウィルス(COVID-19)の状況によっては実験の実施自体が難しくなる可能性がある.そのあたりは,状況も踏まえながら柔軟に対応していきたいと考えている. 以上が,2020年度の研究の推進方策である.
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Causes of Carryover |
提案する学習理論の学習効果を検証する実験を実施していないため,実験協力としての人件費・謝金を支出していない.その分,次年度使用額が生じた.2020年度では,「プレ・バズセッション」の学習効果を検証する実験計画を立て,実施する予定である.そのため,2020年度では,改めて実験協力としての人件費・謝金に予算を使用する予定である.ただし,実験を実施するとなると,被験者を教室等の部屋に集める必要がある.現在の新型コロナウィルス(COVID-19)の状況によっては実験の実施自体が難しくなる.実験が実施できなかった場合は,2021年度に使用する予定である. 実験が実施できた場合は,その実験で得られたデータを分析する必要がある.そのため,2020年度では,データ分析用のPCを購入予定である. また,打ち合わせや学会での研究発表などの旅費として,使用する予定である.
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