2021 Fiscal Year Research-status Report
講義VOD上の議論における思考の発散・深化・収束を促す支援方法の研究
Project/Area Number |
19K12276
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
浅羽 修丈 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (50458105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斐品 正照 東京国際大学, 商学部, 教授 (30305354)
西野 和典 太成学院大学, 経営学部, 教授 (70330157)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 事前学習 / バズ学習 / ソーシャルメディア / 講義ビデオ / コア・モジュール / 思考の発散 / 試行実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,オンライン・非同期・分散での講義ビデオオンデマンド視聴学習において学習者同士がテキストコメントを用いて議論する際に,思考の発散・深化・収束という3つのステップを経ることで,より高度な共同学習環境を実現することにある.2020年度では,構想した「プレ・バズセッション」のねらいである“授業の準備状態を高める”の構成要素を整理し,そのねらいをオンライン上で実現するためのコア・モジュールの要求と仕様を検討した上でプロトタイプシステムを開発した. 2021年度では,以下の2つの成果を挙げることができた. 1つ目は,検討した要求と仕様を基に,Java ScriptとPHP,MySQLを用いたコア・モジュールを開発したことである.コア・モジュールの開発により,プレ・バズセッションをオンライン上で実施する基礎ができた.この成果の重要性は,オンライン上でのプレ・バズセッションにおいて思考の発散・深化・収束を支援する機能について検証する土台ができたことにある. 2つ目は,開発したコア・モジュールを用いた発散思考の試行実験を行い,その結果を検証したことである.本研究では思考の発散・深化・収束という3つの思考活動の促進をねらっているが,その思考活動全てを1回5分程度のプレ・バズセッションで実現することは難しい.そこで,プレ・バズセッションを思考活動毎の3回に分けて実施することを想定し,試行実験では,コア・モジュールを用いて思考の発散ができそうかどうかを検証した.その結果,他者のテキストコメントから学ぶ立場の思考が活性化されやすく,そこから発散思考のきっかけ作りができる等の効果がある一方で,教える立場の思考を活性化させる支援が必要である等の課題も明らかになった.この成果は,開発したコア・モジュールが思考の発散を促進する可能性を示す一方で,研究の課題も明らかにしたという意味で意義深い.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,思考の発散・深化・収束という3つの思考活動の全てを実現するシステムの検証と開発,および,その評価実験と分析まで進めている予定であった.現状では,オンライン・非同期・分散での講義ビデオオンデマンド視聴において学習者同士がテキストコメントを用いて議論する学習活動を「プレ・バズセッション」に焦点を絞り,プレ・バズセッションをオンライン化するコア・モジュールの開発,および,開発したコア・モジュールを用いて思考の発散ができそうかについての検証に留まっている.すなわち,思考の深化と収束に関するシステムの検証と開発,および,評価実験までは至っていない. その主な原因は,コア・モジュールの開発の遅れにある.2019年度に構想したプレ・バズセッションに関しては,2020年度に引き続き2021年度もその研究的価値を明らかにするための議論や先行研究の調査を行ってきた.特に,3つの思考活動の入り口となる思考の発散に焦点を絞り,それ繋がる学習理論や先行研究を踏まえた議論に時間をかけてきた.その過程で,コア・モジュールに要求される機能も多様になり,それを実現するための開発コストも増加する結果となった.このことが,コア・モジュールの開発が遅れた大きな要因となった. しかしながら,本研究では,プレ・バズセッションにおける思考の発散は,重要な思考活動のひとつと位置付けており,そのことについてしっかり検証できたことは,時間は要したものの本研究を前進させる要因となった.さらに,その検証を基にしたコア・モジュールを開発できたことは,大きな研究成果といえる. これらのことを踏まえて,現在までの達成度を「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」や「現在までの進捗状況」でも記述したように,現在は,プレ・バズセッションのオンライン化を実現するコア・モジュールの開発にまで至っている.また,開発したコア・モジュールを用いた発散思考の試行実験も終え,その可能性や課題も明らかにしてきた.今後は,実践的な教育場面でコア・モジュールを用いたプレ・バズセッションを実施し,思考の発散に焦点を絞った検証を行う. 当初の計画では,思考の発散を支援するシステムの検証と開発を終えた後はその評価実験と分析に留め,実践的な教育場面での活用は,思考の深化・収束を支援するシステムの検証と開発の後に,思考の発散・深化・収束の3つをまとめて行うことを考えていた.しかしながら,思考の発散を支援する機能を明確にするためにも,まずは思考の発散に焦点を当てた実際の教育場面での活用を行うべきだと考えている. コア・モジュールを実践的な教育場面で活用した後は,学習者が送信したテキストコメントのデータを得ることができる.そのデータから,どのようなテキストコメントのやり取りが行われていたのか,何がきっかけで発散思考が活発になったりならなかったりするのか等を明らかにするための質的データ分析を行う.この質的データ分析の結果を基に,プレ・バズセッションにおいて思考の発散を促進する機能は何かについて検証し,その機能を実装する拡張モジュールを提案および開発することを目指す. 以上が,2022年度の研究の推進方策である.
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Causes of Carryover |
コア・モジュール開発の遅れにより,実験協力者を交えた評価実験を実施することができず,実験データを得ることができなかった.そのため,実験協力としての人件費・謝金の支出,および,データ分析用PCの購入を見送った.コア・モジュールの開発は既に終えているので,2022年度では実践的な教育場面における学習データを得る予定である.学習データを得た際には,改めてデータ分析用PCの購入に予算を使用する予定である. 新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,出張による対面での研究打ち合わせを控えた.また,研究発表もオンライン開催であった.そのため,国内旅費を支出していない分の次年度使用額が生じた.2022年度では,新型コロナウイルス感染症拡大の状況を見ながら,可能であれば対面での研究打ち合わせを行い,議論を進めていく予定である.対面による研究発表が開催されれば,感染対策を行った上で参加したいと考えている.その際に,改めて国内旅費に予算を使用する予定である.
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