2019 Fiscal Year Research-status Report
ミクロとマクロの統合によるコミュニケーションの相互予測・適応モデルと音楽への適用
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19K12288
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
北原 鉄朗 日本大学, 文理学部, 教授 (00454710)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 作曲支援 / 旋律概形 / 旋律生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究成果を以下に示す。 ・与えられたコード進行に対して、隠れマルコフモデルを用いて適切なウォーキングベースラインを自動生成する技術を実現した。隠れマルコフモデルでは、隠れ状態を適切に設計することが肝要である。最も簡単な方法は、ベースラインの音名(ピッチクラス)を隠れ状態に割り当てることであるが、音名の出現分布が拍節位置によって大きく変化するという特徴を考慮できない。そこで、音名と拍節位置の直積として隠れ状態を設計することで、この特徴を考慮するモデルを実現した。客観評価および主観評価を通じ、このモデルが他のモデルよりも品質のよいベースラインを生成できることを確認した。この成果は、CMMR 2020にて発表した。 ・旋律概形を用いた作曲支援システムに関して、実験結果の分析を行った。作曲や即興演奏などを行うには、旋律を考える際にコード進行に合った音高を選び出す必要があるが、音楽理論を持たない一般の人には簡単なことではない。我々は以前より、ユーザが旋律の大まかな形を曲線(旋律概形と呼ぶ)で描き、システムがその曲線に沿いつつも音楽的に適切な音高からなる旋律を生成するというアプローチで、作曲や即興演奏を支援する技術について研究を重ねてきた。今回、我々は以前実施した実験データを改めて分析を行うことで、旋律概形を用いた作曲支援システムが、作曲未経験のユーザの旋律作成行為を支援できることを確認した。この成果は、Journal of Creative Music Systemsに掲載された。 ・旋律概形を用いた即興演奏システム「JamSketch」のための簡易的な旋律生成アルゴリズムを考案し、同システムのAndroid版の開発に取り組んだ。基本的な部分の開発は概ね完了しており、細かなシステム改良を完了した後、早期にリリース予定である。 ・その他、作曲支援や編曲支援に関する応用システムをいくつか開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究資産を活かしつつ、一歩一歩研究を進行させている。一方で、より一層の研究推進のためには、研究に必要なコーパスの整備、計算サーバなどの研究環境(クラウドを含む)の拡充、雇用した技術者とのチーム連携による多角的な技術開発をこれまで以上に進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に取り組んだ内容をさらに進めていく。それと同時に、現在所有する旋律コーパスでは先進的な機械学習の活用に限界があるので、より大きな規模のコーパス整備を進めていく。機械学習については、クラウド上の計算資源を最大限に活用することで、環境整備に要する時間と手間を最小限にし、研究成果の確保に注力する。また、他分野の研究者と連携し、福祉などの周辺分野への応用・展開も検討する。
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Causes of Carryover |
調達物品、出張先、論文投稿先などを注意深く選定したところ、当初の予定よりも20万円程度支出額が少なかった。この分は、2020年度の技術者雇用およびコーパス拡充経費として活用する予定である。
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