2022 Fiscal Year Annual Research Report
統合海氷厚推定アルゴリズムの構築と北極海氷分布変動の解明
Project/Area Number |
19K12296
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
島田 浩二 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80421882)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海氷 / 北極海 / 海氷厚推定 / 熱力学的成長 / 力学的成長 / 海氷面積変動 / 北大西洋海洋変動 / 海氷による淡水フラックス |
Outline of Annual Research Achievements |
北極海の主たる海氷が多年氷から一年氷に置き換わった2008年以降、北極海の夏の海氷面積は4年周期変動が卓越しており、負のフィードバック機構が存在することが示唆される。海氷変動が顕著な海域は、バレンツ海~カラ海~ラプテフ海域(BKL海域)とその沖側の北極海である。①同海域で海氷が多い場合には、アイスランド低気圧(IL)の北東部への張り出しが小さく、低圧部はバレンツ海~カラ海の領域に限られ、その沖の北極海まで拡大しない。すると、フラム海峡北部の地衡風は極点からフラム海峡に向かう状態になる。そのため、北極海内部の海氷はフラム海峡から放出されやすくなり、海氷が減少する(減少フェイズ)。②BKL海域とその沖側の北極海の海氷が減少するとILの北東部への張り出しが大きくなり、地衡風は、極点からグリーンランド北部沿岸に向かう状態になる。この場合、北極海内の海氷はフラム海峡から放出されにく海氷は収束し力学的成長が大きくなり、海氷は増に転じる(増加フェイズ)。③北極海を海氷が横断する時間スケールは約2年で、4年変動周期が形成されていることが分かった。 北極海の海氷変動とフラム海峡の海氷放出量に密接な関係があるから、その影響は海氷による淡水の供給域にあたる北太平洋亜寒帯循環域に現れると考えられる。淡水供給量変動は混合層厚の変動を通じて海面水温変動に影響する。フラム海峡での海氷放出量と温暖化進行中のcold spot海域(北緯54~58°、西経34~42°)における海面水温変動の関係を調べたところ、7-8年フラム海峡の海氷放出変動が先行していることが分かった。これは、Great Salinity Anomaly の移流時間スケールと矛盾しない。そこで、海面水温を目的変数、7年前と8年前の海氷放出量を2つの説明変数として重回帰分析を行ったところ、0.26℃の精度で海面水温を推定できることが分かった。
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