2021 Fiscal Year Annual Research Report
燃焼起源鉄を含むエアロゾルのエイジング過程の解明:海陸風循環を利用したアプローチ
Project/Area Number |
19K12297
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩本 洋子 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (60599645)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 燃焼起源エアロゾル / 微量金属成分 / 主要イオン成分 / 粒径分布 / 濃縮係数 / 固定発生源 / 瀬戸内海 |
Outline of Annual Research Achievements |
燃焼起源鉄を含む大気エアロゾル粒子のエイジング過程を明らかにするため、燃焼起源鉄の発生源に近い沿岸サイト(広島大学練習船呉基地)と海陸風循環の影響を受ける内陸サイト(広島大学東広島キャンパス)において採取した大気エアロゾル試料の分析を行なった。 総観規模では、両観測サイトは秋季から春季にかけては大陸起源、夏季は海洋起源、梅雨時期は国内起源のエアマスの影響下であった。また、太平洋高気圧下で風が弱く海陸風循環が発達しやすい夏季においても、気圧配置によっては長距離輸送の影響を強く受けることがあった。 主成分分析の結果、大気エアロゾル中の水溶性Feは人為起源の寄与が大きいことがわかった。水溶性Feは沿岸サイトでは89%、内陸サイトでは73%が微小粒子(PM2.5)の画分に存在していた。水溶性Feの濃度は、両サイト共に夏季と秋季に高い傾向があり、どの季節においても内陸サイトよりも沿岸サイトの方が高かった。また、両サイトにおいて水溶性Fe濃度は硫酸塩およびアンモニウム塩濃度との相関が高かった。内陸サイトでは沿岸サイトに比べて高い相関係数が得られたことから、輸送中に水溶性Feと人為起源の硫酸アンモニウムとの混合が進んだことが示唆された。 沿岸サイト近傍の主要な燃焼起源鉄の発生源と考えられる製鉄所は、観測期間中の2021年9月に高炉を停止した。沿岸サイトでは、燃焼起源と考えられる球状の鉄含有粒子の顕著な減少が確認された。また、沿岸サイトのエアロゾル中のFeは、高炉停止後に全量で70%、水溶性で53%減少した。水溶性Fe濃度は沿岸および内陸の両サイトにおいて減少が観測されたが、Feの濃縮係数の比較から、高炉停止に伴う燃焼起源鉄の減少は沿岸サイトのみで観測され、その影響は局所的であった。
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Research Products
(4 results)