2021 Fiscal Year Research-status Report
植物による根圏土壌中の活性塩基生成が土壌炭素隔離に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
19K12299
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
保原 達 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (70391159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 真悟 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (00346371)
森泉 美穂子 龍谷大学, 農学部, 准教授 (10220039)
澤本 卓治 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (60364246)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 土壌有機物 / ケイ酸吸収 / 火山灰土壌 / CO2放出 / 炭素隔離 / 植物根 / 土壌炭素隔離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物が根圏土壌鉱物中の活性塩基生成を通じて土壌有機物の蓄積や安定性にどのような影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的としている。研究内容は大きく2つに分かれ、(1)植物根圏土壌中の活性塩基生成促進が土壌有機物の保持に及ぼす影響と、(2)根圏で生成された活性塩基によって保持される土壌有機物の安定性の解明を主眼とする。その解明にあたり、植物根圏における土壌有機物蓄積のための栽培試験、そして蓄積した土壌有機物からのCO2放出試験を用いて進めている。2019年度から2020年度にかけては、植物根の土壌蓄積に与える影響を調べるための栽培実験と、そこで得られた植物体および土壌の分析を進め、特にイネによる土壌鉱物の活性化の可能性について明らかにしてきた。また、この栽培で得られた土壌を用いて、蓄積された土壌炭素の分解性に関する研究も実施した。さらに2021年度は、この植物根の土壌鉱物活性化に影響を及ぼしうる機能について調べたほか、土壌鉱物によって隔離される土壌炭素(有機物)の分解性に関する試験を行った。その結果、イネには鉄を特異的に強く保持する能力が高いことが示唆された。また、鉱物とともに蓄積した土壌有機物が、特にアルミニウムなどによって強固に固定されているものほどリンの添加が多いほど分解活性が強くなる可能性が示唆された。一方で、窒素を添加した場合は、窒素の添加が多くても分解活性が必ずしも上昇しなかった。そのため、土壌に隔離された炭素の開放にこうした無機物質が関連する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、当初より、植物根圏における土壌有機物蓄積のための栽培試験、そして蓄積した土壌有機物からのCO2放出試験などが進められており、これらの進捗は概ね予定していたとおり進んだ。しかしながら、土壌有機物の安定性については決定的な要因が絞れていない状況である。そのため、研究の公表なども計画より進んでいず、それらを鑑み、研究の現在までの進捗状況としては総合的にやや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、土壌有機物の安定化について、イネ科草本由来の土壌有機物が蓄積している土壌を用いて、再度土壌培養試験を行い、特にイネ科植物下に生成する土壌有機物の安定化に関する知見を得る。そして、それまでの研究を総括し、研究成果をまとめるとともに、2021年度行えなかった学会発表や公表に至っていない解析結果の論文化を進めることとする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、特にイネ科植物下に生成する土壌有機物の安定化に関する知見について、本研究の目的をより精緻に達成するために、安定化に影響を与える要因の解明においてさらなる追加実験の必要が生じた。また、それまでの研究を総括し、研究成果をまとめ、学会発表や解析結果の論文化が遅れており、それらを行う必要が生じている。そのため、2022年度に、土壌有機物安定化に関する培養実験を進めるため、次年度使用額を用いて実験用具などを用意するほか、学会発表などを行うための旅費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)