2019 Fiscal Year Research-status Report
都市域河川水における希土類元素とその他レアメタルの潜在的汚染の実態調査と動態解析
Project/Area Number |
19K12300
|
Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
伊藤 彰英 麻布大学, 生命・環境科学部, 教授 (60273265)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朱 彦北 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90422790)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 希土類元素 / レアメタル / 河川水 / 潜在的汚染 / Gd / ICP-MS / 水生昆虫 / 下水処理放流水 |
Outline of Annual Research Achievements |
キレート固相抽出法を併用するICP-MS法により,多摩川の中流域から河口域までの15地点で採水した河川水試料を分析し,Sc,YおよびPmを除く14元素の希土類元素とその他のレアメタルを44元素について、100 μg L-1から0.1 ng L-1までの濃度レベルで、概ね相対標準偏差(RSD)0.2~10%で精度よく定量することができた。 下水処理放流水の流入前後の河川水試料を多元素プロファイリングアナリシスにより比較したところ、放流水流入後のB, Li, Rb, Mn, Ni, Mo, Co, Cs, Gdの濃度は、流入前に比べて数倍から数十倍高かった。これらの元素は明らかに下水処理放流水から河川水に流入したと考えられる。いずれも河川水中濃度はng L-1 (ppt)レベルであり、著しい濃度上昇ではないが、下水処理放流水の影響を受けて濃度上昇が起こることが明らかになった。Gdの他にも8元素が同様の傾向を示すことから、Gd以外のレアメタルも潜在的汚染元素となる可能性があることが示唆された。 また、河川水中希土類元素濃度の経年変化を検討したところ、過去の分析結果報告がある中流域と河口域の2地点においては、河川水中Gd濃度が、変動幅を考慮しても約20年前の文献値と比べてそれぞれ2-4倍,3-4倍となった。したがって、多摩川河川水におけるGd濃度は、近年上昇したことが明らかになった。 水生生物としてトビケラ幼虫を下水処理場の前後の4地点で採取して分析した結果、希土類元素14元素とその他レアメタル17元素について定量値を得た。希土類元素はいずれも生物濃縮係数は高かったが、トビケラ幼虫へのGdの特異的な濃縮は見られなかった。その他レアメタルでは、下水処理場下流で採取したトビケラ幼虫に含まれるLi, Ti, V, Gaの濃度が高く、河川水の分析結果とは異なる特徴が確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多摩川河川水において、中流域から河口域までの15地点で複数回のサンプリングを行って分析した結果、河川水中の希土類元素及びその他レアメタルの約60元素を定量することができた。多元素プロファイリングアナリシスにより下水処理放流水の流入による河川水の特徴的な濃度変化を確認し、過去の文献値と比較することにより、希土類元素の経年変化を明らかにした。 さらに、水生生物としてトビケラ幼虫の分析も実施した。したがって、当初の計画していたほとんどの実験を予定通り行うことができ、研究成果も得られているため、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、多摩川の中流域から河口域までの河川水中希土類元素及びその他レアメタルの定期的な調査を行い、河川水中の希土類元素及びその他レアメタルについて、溶存成分だけでなく粒子成分も分析し、潜在的汚染元素の動態に関してさらに検討を進める予定である。 水生生物についてはトビケラ幼虫の他に、多摩川に広く生息するヨシノボリなどの魚類についても採取・分析を行うとともに、河川水中潜在的汚染元素を影響をさらに明確にするために、元素を添加した河川水や下水処理放流水が流入した河川水で飼育実験を実施し、摂取量や濃縮度の検討を行う予定である。 また、固相抽出法による分離やHPLC/ICP-MSオンラインシステムにより、希土類元素を中心に化学形態別分析を実施する予定である。この手法を確立した後に、下水処理放流水そのものや下水処理放流水流入後の河川水を分析し、Gd造影剤がそのままの化学形態で存在しているのか、他の化学形態に変化しているのかを明らかにし、水生生物への影響を検討していく予定である。
|
Causes of Carryover |
実験が順調に進んだため、消耗品の使用量が予定よりも少量で実験を行うことができ、次年度使用額がわずかに発生した。次年度は水生生物の分析で飼育実験も併用するため、こ次年度使用額はこの実験における消耗品費に充てる予定である。
|
Research Products
(6 results)