2019 Fiscal Year Research-status Report
避難指示区域内の家屋内における放射性セシウムの経時的変化
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19K12306
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小豆川 勝見 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00507923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 まゆみ 東京大学, 教養学部, 特任助教 (50782869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / ダスト / 家屋内汚染 / 避難指示 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年の福島第一原子力発電所事故以来、除染によって家屋外の空間線量率は低減しますが、一方で家の中の汚染は定量的に評価する研究例が圧倒的に少ないことが実情で、家では安心できるのか、どのような対策が求められているのか、その情報が帰還前に明示されていなければなりません。家屋内の汚染は、放射性セシウムがダストとして混入することが原因であることは既によく知られている事実ですが、帰還後の居住を見据えた、時系列の情報が欠けています。私たちの研究では研究期間内(2019-2021年)に避難指示が緩和または解除される予定のエリアを中心に、様々な家屋に入り込む放射性物質を時系列で解析することを目的としています。 2019年度では、福島県双葉郡大熊町、浪江町の帰還困難区域内を中心とした家屋について、予察的な家屋内汚染調査を行うことができました。測定を行った大熊町のある家屋においては、207日間に亘って簡易なダストトラップを設置した結果、家屋1階中央のリビングには1 cm<sup>2</sup>かつ1日あたり0.000041 Bqから0.00032 Bqの放射性セシウム(<sup>134</sup>Csと<sup>137</sup>Csの合算)が室内に新たに沈着する事が分かりました。検出された<sup>134</sup>Cs/<sup>137</sup>Cs放射能比から、そのほぼ全量が福島第一原子力発電所由来であることも確認しました。さらに、この数値は他の帰還困難区域内の家屋と比較すると、汚染の規模は小さいことが分かりました。この理由は、築浅(8年)かつ、気密性の高い家であるためです。一方で築年数が長い家屋では、先に挙げた数値の10倍の大きさになるところもありました。つまり、家屋の気密性が汚染を防ぐ重要な因子であることを示唆しています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
帰還困難区域内の家屋では、電気・水道といったインフラが未だ復旧がなされていないため、簡易のダストトラップとして同一サイズの布を定期的に回収する方法で時系列の評価を行いました。この方法は設置・回収が極めて容易であるため、協力者を募り予定以上の家屋数(5軒)で評価を行うことができました。しかし一方で、布回収時におけるダスト回収率の評価法が確立できておらず、現在鋭意検討を進めているところです。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には帰還困難区域内の5軒の家屋を調査することが出来ました。その結果、家屋の機密性と汚染の関連性を同年開催の国際学会(JpGU)で公表しましたが、2020年度はより時間分解能と回収率の高いダストトラップの改善を計画しています。また2020年3月にJR常磐線が全線復旧し、帰還困難区域の中にある富岡町、大熊町、双葉町の駅周辺でも避難指示が部分的に解除された事を踏まえ、一般家屋以外の建物でも調査を行う予定です。 しかしながら、2020年4月よりCOVID-19感染拡大の影響で大学構内が閉鎖されているため、2020年度は研究が想定よりも遅滞することが想定されます。
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Causes of Carryover |
2月に調達予定であった分析用測定器の部品(中国産)がコロナ禍の影響で延期になったため。遅れは生じたものの、2020年度で購入する予定。
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Research Products
(1 results)