2019 Fiscal Year Research-status Report
光学的測定法による植物プランクトン群集動態の新現象解明を目指したモニタリング観測
Project/Area Number |
19K12311
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
後藤 直成 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (40336722)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 植物プランクトン / 群集動態 / 琵琶湖 / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、複数の光学的測定法を用いて植物プランクトン群集動態のモニタリング観測を実施し、琵琶湖における植物プランクトン群集の新たな動態像を示すことを目的としている。そこで、初年度(令和元年度)は、琵琶湖北湖湖心部(水深50 m)において、船舶観測と衛星観測を実施した。 船舶観測では、植物プランクトン群集を大型(20 μm以上)・中型(5-20 μm)・小型(5 μm以下)にサイズ分けした後、各サイズのクロロフィルa濃度、種組成、光合成活性を測定した。種組成は検鏡および多波長励起蛍光計を用いて、光合成活性(Fv/Fm)はクロロフィル励起蛍光計を用いて測定した。衛星観測では、一昨年打ち上げられた気候変動観測衛星(GCOM-C/SGLI、JAXA)と地球観測衛星(Aqua/MODIS、NASA)のデータを利用して、琵琶湖北湖全域における植物プランクトン現存量(クロロフィルa濃度を指標)の時空間的分布を調査した。 その結果、琵琶湖北湖において、春期(5-6月)と秋期(10-11月)に大型緑藻2種(Micrasterias hardyiとStaurastrum dorsidentiferum)が大規模に増殖(ブルーム)する過程を各環境因子の変動とともに捉えることができた。この両時期における大型緑藻のブルームは、陸域と湖内深層からの栄養塩供給および台風による湖水の鉛直攪乱が要因になったと推察される。また、大型種が持つ特徴(低捕食圧、高親和性、饑餓耐性など)もブルームを支える一因になったと考えられる。 衛星観測では、琵琶湖北湖全域における植物プランクトン現存量の水平分布が高解像度で示され、これまで捉えることができなかった植物プランクトン群集の分布動態が明らかとなった。例えば、北湖東岸域で増殖した植物プランクトンが湖流によって沖域へと運ばれる様子や、成層期に発達する環流によって、植物プランクトン群集が湖心部に集積する様子を明瞭に捉えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
船舶観測による植物プランクトンの種組成と光合成活性のモニタリング観測は定期的(月に1~2回)に実施できており,本研究は概ね計画通りに進んでいる。初年度(令和元年度)の観測結果から,大型緑藻のブルームと擾乱イベント(代掻き,台風など)との関係性が示され,近年の琵琶湖における大型緑藻優占の要因の一端が明らかとなった。 また,衛星観測では,琵琶湖北湖全域における植物プランクトン現存量の分布動態を明瞭に捉えることができた。2017年末に打ち上げられた気候変動観測衛星(GCOM-C/SGLI,JAXA)のデータ(衛星リモートセンシング反射率)を用いたクロロフィルa濃度の推定精度は,水中生物光学アルゴリズムの最適化によって向上し,ほぼ実用レベルに達していることを確認した。以上のことから,本研究は「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(令和2年度)は,先述の船舶観測と衛星観測に加えて,係留観測を実施する。琵琶湖北湖湖心部(深度66 m)にクロロフィル蛍光計と光量子計を3深度(5,10,15 m)に設置し,クロロフィルa濃度と水中光量子量を連続的に観測する。これらのデータとパルス変調式クロロフィル励起蛍光計で測定した光合成-光曲線から単位面積あたりの日間一次生産速度を算出する。船舶観測,衛星観測,係留観測を年間を通じて同時に実施し,琵琶湖における植物プランクトン群集動態を時空間的に高解像度かつ広域的に捉える予定である。
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Causes of Carryover |
「人件費・謝金」の支出が少なくなり,次年度使用額(113,299円)が生じた。令和2年度は,「人件費・謝金」に加えて「旅費」の支出が少なくなる可能性があるが,その場合は,「物品費」あるいは、「その他」経費として使用する予定である。
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