2020 Fiscal Year Research-status Report
光学的測定法による植物プランクトン群集動態の新現象解明を目指したモニタリング観測
Project/Area Number |
19K12311
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
後藤 直成 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (40336722)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 植物プランクトン / 群集動態 / 琵琶湖 / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、複数の光学的測定法を用いて植物プランクトン群集動態のモニタリング観測を実施し、琵琶湖における植物プランクトン群集の新たな動態像を示すことを目的としている。2020年度は、北湖湖心部において、係留・船舶観測を実施するとともに、衛星観測を実施した。係留観測では、2020年4月から12月にかけて、湖心部に係留系を設置し、クロロフィルa濃度と光量子量を連続的に測定した。これらのデータと光合成-光曲線から一次生産速度を算出した。また、船舶観測により、植物プランクトン種組成およびサイズ別(大型:>20 um,中型:5-20 um,小型:<5 um)のクロロフィルa濃度と光合成活性(FvFm)を測定した。衛星観測では、気候変動観測衛星(GCOM-C)から得られたリモートセンシング反射率を用いて琵琶湖全域におけるクロロフィルa濃度分布を推定した。一次生産速度は,0.04~3.56(平均0.87)gC m-2 d-1の範囲を変動しており、5・6月において比較的高く、8月以降は低い一次生産速度で推移した。この一次生産速度は、2018年に測定された一次生産速度(平均1.69 gC m-2 d-1)と比較して低い傾向にあり、特に、8月から11月の一次生産速度が著しく低下していた。この時期の平均最大風速は,2018年と比較しておよそ半減しており、また、湖水を混合させる擾乱イベントである台風の接近もなかった。このような静穏な環境は、成層の強化・長期化を引き起こし、結果として,深層から表層への栄養塩供給量を減少させる。このような一連の現象が、8月以降の一次生産速度の大幅は低下を引き起こしたと考えられる。また、秋季における植物プランクトンサイズの小型化および現存量低下を確認した。これらの現象もまた、水温成層の強化・長期化に起因する栄養塩供給量減少が要因になっていると推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
船舶観測による植物プランクトン群集動態(サイズ別のクロロフィルa濃度および光合成活性、種組成)のモニタリング観測は定期的(月に1~2回)に実施できており,計画通りに進んでいる。また、2020年4月から12月の北湖湖心部において係留観測を実施し、日間一次生産速度を連続的に捉えることができた。これらの観測から、温暖化に起因する一連の現象が琵琶湖の植物プランクトン群集動態に大きく作用し、琵琶湖の有機物生産力の大幅な低下を引き起こすことを確認した。また,衛星観測では,琵琶湖全域における植物プランクトン現存量の分布動態を従来にない高解像度で詳細かつ明瞭に捉えることができた。この衛星観測から、琵琶湖全域における植物プランクトン分布動態について多くの知見を得ることができた。以上のことから,本研究は「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(2021年度)は,前年度と同様に係留・船舶観測および衛星観測を年間を通じて同時に実施し,琵琶湖における植物プランクトン群集動態を時空間的に高解像度かつ広域的に捉える予定である。係留観測では、2021年4月から12月にかけて、一次生産速度を連続的に測定する。船舶観測では、月に1回の頻度で、植物プランクトン種組成およびサイズ別(大型:>20 um,中型:5-20 um,小型:<5 um)のクロロフィルa濃度と光合成活性を測定する。衛星観測では、気候変動観測衛星(GCOM-C/SGLI)から得られたリモートセンシング反射率を用いて琵琶湖全域におけるクロロフィルa濃度分布を推定する。上記の観測と並行して、3年間の研究で得られたデータを詳細に解析し、植物プランクトン群集動態を環境因子との関係を絡めて評価する。これにより、琵琶湖における植物プランクトン群集の新たな動態像を提示する。
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Causes of Carryover |
「人件費・謝金」と「旅費」の支出が少なくなり、次年度使用額(29,548円)が生じた。令和3年度もまた「人件費・謝金」と「旅費」の支出が少なくなる可能性があるが、その場合は、「物品費」あるいは、「その他」経費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)