2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K12322
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河合 秀彦 広島大学, 医系科学研究科(薬), 准教授 (30379846)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射線被曝 / がん / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線被曝によって誘発される細胞の種類に依存した細胞応答性と発がんメカニズムの関係について明らかにすることを目的に本研究を行った。 放射線発がんの標的モデル細胞として、iPS細胞とp53ノックアウトiPS細胞を用いた。これらの細胞の線量率の異なる放射線照射に対する細胞応答性について、ハイコンテントイメージングシステムを用い、比較解析を行った。その結果、iPS細胞ではp53の有無に関わらず、放射線に対する細胞応答のエンドポイントが細胞死であり、放射線照射に対して、ほぼ同様の生存率曲線を示すことが明らかとなった。更に、iPS細胞の細胞死には、p53を依存性の経路と非依存性の経路の2つが存在することが明らかとなった。また、p53が存在しない場合、より高い放射線感受性を示す条件が見出されたことから、p53依存的な放射線抵抗性機構が存在する可能性も示唆された。 次に、放射線照射によってiPS細胞特異的に誘発される変異を明らかとすることを目的に、放射線照射したiPS細胞、あるいは、放射線によって細胞老化が誘導された線維芽細胞と共培養したiPS細胞について、supF遺伝子シャトルベクターとNGSを用いた変異解析系を用いて、変異解析を行った。その結果、iPS細胞で生じる変異は、特殊なDNA複製機構を介して生じるものが多いことが明らかとなった。また、老化細胞と共培養した場合やp53ノックアウト細胞では、そうした変異のみが増加する傾向が認められたことから、iPS細胞で誘発される変異には、p53や微小環境要因が関わる可能性が示唆された。 幹細胞では、その特殊な細胞応答性によって、放射線被曝による変異が特に誘発されにくい状態であることが明らかとなった。一方で、そうした変異は微小環境やp53およびその他の環境によって増加した。本研究の結果は、放射線発がんの新たな機構の解明につながるものと考えられる。
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Research Products
(8 results)