2023 Fiscal Year Annual Research Report
新規視覚化技術による非相同末端再結合タンパク質モニタリング系の開発とその応用
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19K12325
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
柳原 晃弘 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (70423051)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | DNA修復 / DNA二重鎖切断 / ライブセルイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線によってできるDNAの二重鎖切断の修復は、細胞の生存にとって極めて重要である。DNA二重鎖切断の修復経路には、非相同末端再結合(NHEJ)と相同組換え(HR)と呼ばれる二つの主要な経路があるが、ヒトでは主にNHEJが利用される。修復タンパク質の局在は、放射線に応答してダイナミックに変化する。これは主にHRタンパク質について進められてきた研究成果であるが、ヒトで主要な役割を果たすNHEJについては、技術的な問題から、長年ダイナミクス解析が不可能であった。そのため、NHEJタンパク質が細胞内でどのように振る舞い、どのようにして主要な役割を果たしているのかなど、多くの謎が残されていた。 本研究ではこの課題を解決するため、新たな可視化技術の開発に挑戦し、放射線照射後のNHEJタンパク質のダイナミックな変化を観察する技術を確立した。前年度までに、NHEJに関わる複数のタンパク質のダイナミクス観察に成功しており、これらが放射線照射後にDNA切断部に集まってきていることを確認していた。最終年度には経時的なライブ観察を行い、一度切断部に集まってきたNHEJタンパク質が、時間経過とともに分散していく様子を捉えることができた。これは、役割を終えた、あるいは修復が終わったことを意味していると推測される。 この技術開発は、単にNHEJタンパク質のダイナミクス解析を可能にしたというだけではなく、DNA二重鎖切断修復の主要経路両方のタンパク質を同時に観察することを可能にし、切断修復全体のダイナミクス、両経路の制御メカニズムなど、二重鎖切断修復の全体像を把握するための大きなブレークスルーになると考えられる。本研究での技術開発の達成により、今後、NHEJタンパク質のダイナミクスの制御メカニズムなど、DNA二重鎖切断修復の時間的・空間的な制御メカニズムの解明が進んでいくと期待される。
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