2021 Fiscal Year Research-status Report
放射線が細胞競合に及ぼす影響をラット乳腺培養系で評価する
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19K12334
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
西村 由希子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線影響研究部, 技術員 (70837822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今岡 達彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, グループリーダー (40356134)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞競合 / マイクロビーム / 低線量率放射線 |
Outline of Annual Research Achievements |
低線量放射線が当たった組織では、放射線がヒットした少数の細胞が、ヒットを受けなかった多数の細胞と共存する。両者が競合して前者が排除されることがあるとすると、放射線のリスクが予想より少なくなる可能性がある。そのため本研究では、ラット乳腺細胞を用いた培養系で、細胞競合現象を観察・解析する技術を確立し、「低線量放射線は細胞競合を引き起こすのか」「遺伝子変異を持つ細胞と正常細胞の競合に、放射線は影響を与えるのか」という問いに答えることを目指している。令和3年度は、0.3~10Gyの様々な線量を、ターゲット細胞(GFP標識)のみに照射(以下、「Spot照射」と呼ぶ。)または周辺の細胞(DsRed標識)を含めて照射(以下、「Broad照射」と呼ぶ。)し、3時間ごとに7日間タイムラプス撮影を行って、ターゲット細胞が排除されるかどうかを分析した。その結果、ターゲット細胞の動態に、照射による有意な変化は見られなかった。まず、ターゲット細胞にマイクロビームが正確に当たっていない可能性を考え、免疫染色によって、マイクロビーム照射によって誘導されるはずのγH2AX発現を確認した。その結果、Spot照射のターゲットとしたGFP細胞に隣接するDsRed細胞にγH2AX発現が見られるなど、目的の位置から100μmほどずれた位置にビームが当たっている場合があることが分かった。理由を検証した結果、顕微鏡ステージの移動の際にディッシュをセットする台座の留め具が振動によってX軸方向に動く場合があることを確認した。次に、このずれを改善した実験を行ったが、照射・非照射に関わらずほとんどの細胞は移動や分裂をしながら長期間(7日間)生存していた。この結果から乳腺細胞は放射線などで傷ついた細胞を細胞競合現象により排除することなく、ダメージ細胞を蓄積したまま組織内に留まる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ターゲット細胞への正確な照射について予想外の問題が見られたが、照射時にディッシュをセットする台座を変更するなど技術改善を行うことで、目的の1細胞のみに照射することができるようになり、計計画よりやや遅れて「まばらに当たった放射線は細胞競合を起こすのか」という問いに答えるためのデータ収集を行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
変異を持った細胞と正常細胞を混合し、細胞競合を調べる実験技術を確立するため、変異導入ラットと蛍光タンパク発現ラットを交配したラットを用い、変異細胞が細胞競合によって排除される条件を探索する。具体的には正常細胞中に少量の変異細胞が混合した培養条件の作製や、タイムラプス撮影の期間、画像の解析方法などを検討する。また、前年度まで検討・技術改善を行ってきたターゲット細胞にマイクロビームが正確に照射する技術を用い、実験を繰り返すことで「まばらに当たった放射線は細胞競合を起こすのか」の問いに答える。
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Causes of Carryover |
予想外の問題であるビームのずれに時間を要し、実験に使用する器具・試薬等の購入が予定より少なかったことや、打ち合わせがオンラインで行われるなど、旅費が抑えられたため。発生した残高は前年度の遅れを取り戻すため、技術改善を行った繰り返し実験に使用する。
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Research Products
(1 results)