2019 Fiscal Year Research-status Report
異なる種類の放射線に被ばくをすると発がんにどの様な影響をもたらすか?
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19K12336
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
鶴岡 千鶴 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 主任研究員(任常) (60415411)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射線発がん / 線質の違い / 基底細胞がん |
Outline of Annual Research Achievements |
人の生活に関連する放射線被ばくの影響では「発がん」が最も重要である。放射線の種類が異なると生物効果は異なり、それら放射線の発がんリスク評価を行うことは必須である。我々はこれまでPtch1遺伝子ヘテロ欠損マウスで高頻度に発生する髄芽腫のゲノム変異が、照射をしない個体と照射をした個体で異なることを報告した(放射線のシグネチャー変異)。この知見が臓器、放射線の種類が異なっても一般化できるか否かを検証することを目的とした。ガンマ線、中性子線、炭素線を照射した同マウスの終生飼育を行い、寿命短縮および発生した腫瘍ごとのリスクを評価するとともに、発生した腫瘍のゲノム突然変異解析を行うことで「異なる種類の放射線による発がんリスクはどう異なるか?」、「異なる種類の放射線により発生する「がん」の種類(発生臓器)は異なるか?」、「異なる種類の放射線による発がんメカニズムの違いは何か?」を明らかにすることとした。 平成31年度は、終生飼育を行い、解剖時に肉眼的異常が見られた臓器のホルマリン固定および凍結保存を行った。異常臓器のうち脳および皮下の病理標本を作製、バーチャル化、病理診断を行った。寿命解析を行った結果、非照射群および照射群において有意な差は認められなかった。脳の病理診断はすべて髄芽腫であり、照射群は非照射群に比べ有意に発生率が低下しており、これまでの先行研究の結果と一致していた。また、皮下の病理診断はほぼすべてが基底細胞がんであり、照射により発生率が増加、さらに中性子線では他2放射線種よりも高かった。これらの結果から、寿命解析において有意な差が認められなかったのは、発生するがんの種類により照射群において非照射群に比べ抑制されるがんと増加するがんが混在することが要因であると示唆された。また、病理診断によって基底細胞がんと診断された凍結サンプルより分子解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非照射群、照射群ともにすべての終生飼育および解剖を予定通り行った。またPtch1遺伝子ヘテロ欠損マウスに特徴的に発生することが明らかとなっている髄芽腫および基底細胞がんにおいて病理診断を終了し、実験群ごとにおける発生率を算出することができた。また分子解析においても、病理診断が確定した基底細胞がんにおいて予備検討としてLOH解析を行い、これまで明らかとなっている髄芽腫同様にPtch1遺伝子が局在する13番染色体においてLOHが存在することを確認した。さらに残りの基底細胞がん凍結サンプルのDNA抽出を行いLOH解析の準備が整っている。以上のことから平成31年度における研究状況はおおむね順調に伸展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、各放射線の発がんリスク評価を行うために残り異常臓器の病理解析を進める。また、基底細胞がんの分子解析を進めることにより、最終的に「異なる種類の放射線による発がんメカニズムの違いは何か?」を解明する。
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Causes of Carryover |
理由:病理解析を行うための標本作製を脳と皮下に絞り優先的に行うこととしたため、当初のサンプル数より減少し、消耗品の購入が押さえられたため。
使用計画:残りの標本作製を行うための病理消耗品費、もしくは外部発注を行う場合はその発注費
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