2022 Fiscal Year Research-status Report
異なる種類の放射線に被ばくをすると発がんにどの様な影響をもたらすか?
Project/Area Number |
19K12336
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
鶴岡 千鶴 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線影響研究部, 主任研究員 (60415411)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 基底細胞がん / 放射線線質 / 発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
人の生活に関連する放射線被ばくの影響では「発がん」が最も重要である。放射線の種類が異なると生物効果は異なり、それら放射線の発がんリスク評価を行うことは必須である。我々はこれまでPtch1遺伝子ヘテロ欠損マウスで高頻度に発生する髄芽腫のゲノム変異が、照射をしない個体と照射をした個体で異なることを報告した(放射線のシグネチャー変異)。この知見が臓器、放射線の種類が異なっても一般化できるか否かを検証することを目的とした。ガンマ線、中性子線、炭素線を照射した同マウスの終生飼育を行い、寿命短縮および発生した腫瘍ごとのリスクを評価するとともに、発生した腫瘍のゲノム突然変異解析を行うことで「異なる種類の放射線による発がんリスクはどう異なるか?」、「異なる種類の放射線により発生する「がん」の種類(発生臓器)は異なるか?」、「異なる種類の放射線による発がんメカニズムの違いは何か?」を明らかにすることとした。 令和4年度は、ガンマ線、炭素線、中性子線に発生した基底細胞がんの特徴を詳細に解析し、放射線特異的特徴さらには異なる放射線による違いの有無を明らかにするため、ヒト基底細胞がんで報告されているがん原因遺伝子p53遺伝子の突然変異および周辺部のLOH解析を行った。結果、すべての実験群においてp53の突然変異およびLOHは低頻度でしか発生しておらず、放射線誘発特異的な変異も観察されなかった。また、基底細胞がんの病理診断を継続し、病理組織型の特徴を詳細に解析した。結果、非照射群に発生する基底細胞がんと放射線被ばく群では、病理組織型が異なる傾向があることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、「異なる種類の放射線による発がんメカニズムの違いは何か?」の問いに答えるため、基底細胞がんのがん原因遺伝子の分子解析を行った。p53遺伝子の突然変異および11番染色体のLOH解析を行った。結果、ガンマ線、炭素線、中性子線被ばく後に発生した基底細胞がん、非照射群に発生した基底細胞がんにおいて突然変異およびLOHは低頻度でしか発生しておらず、放射線誘発特異的な変異も観察されなかった。次に令和3年度より行っている基底細胞がんの病理組織診断を継続し、病理組織型の特徴をより詳細に解析した。結果、すべての実験群に発生する基底細胞がんは結節型が主であった。しかし、一部腫瘍ではヒト基底細胞がんの高分化型に分類される微小結節型が観察され、また、放射線被ばく後に発症する基底細胞がんは、比較対象である非照射群に比べ間質が過多になる傾向が観察されることを明らかにするなど、おおかた順調に伸展した
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年ではこれまでの成果をまとめ、17th International Congress of Radiation Research(ICRR)にて報告をする。
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Causes of Carryover |
令和2年からのコロナ禍により、国際学会において成果報告を行うことができなかった。そのような中、放射線の影響研究を行っている研究者の最大コミュニティーであるInternational Congress of Radiation Research(ICRR)が2023年に現地開催される。そのため、令和5年度では、令和4年度に引き続き放射線誘発基底細胞がんの特徴を詳細にまとめ、17th ICRRにて成果報告を行う。
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Research Products
(2 results)