2020 Fiscal Year Research-status Report
神経分化影響を引き起こす低濃度メチル水銀曝露の標的エピゲノム分子の探索
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19K12341
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
栗田 尚佳 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (00746315)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メチル水銀 / エピジェネティクス / 神経突起 |
Outline of Annual Research Achievements |
メチル水銀 (MeHg)は水俣病の原因物質である。現在日本で水俣病を引き起こすような高濃度MeHg汚染はないが、天然または人為起源のMeHgは依然として存在しており、MeHgが蓄積した魚介類を妊婦が摂取することによる胎児への低濃度曝露影響が示唆されている。その低濃度曝露の影響が懸念されているMeHgに注目し、in vitroとin vivoの神経発達モデルを用い、低濃度MeHg曝露により、神経突起伸長の抑制、ヒストンアセチル化の低下、およびヒストン脱アセチル化酵素であるHDAC3とHDAC6の上昇、ならびにDNAメチル化の上昇、DNAメチル化転移酵素であるDNMT1の上昇についてin vitroとin vivoの両方のモデルで共通に見出してきた。また、in vitro実験系を用いて、これまでのMeHg曝露によるエピジェネティクス変化と、神経突起伸長との因果関係を検討したところ、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、ならびにDNAメチル化転移酵素であるDNMT阻害剤によって、MeHgによる神経突起伸長抑制の改善が認められた。本年度は、上記の結果を学術論文として発表し (Go et al., Archives of Toxicology, 2021)、低濃度MeHgによる神経突起伸長抑制を引き起こす候補遺伝子として、核内受容体であるNR4A1の遺伝子レベル、タンパクレベルでの発現減少を見出した。今後は、NR4A1遺伝子プロモーター領域のエピゲノム解析、ならびにDNMT1、HDAC3、HDAC6の発現上昇メカニズムの解明とそれに伴うMeHgの標的分子の探索を引き続き行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、in vitroとin vivoの神経発達モデルを用い、低濃度MeHg曝露により、神経突起伸長の抑制、ヒストンアセチル化の低下、およびヒストン脱アセチル化酵素であるHDAC3とHDAC6の上昇、ならびにDNAメチル化の上昇、DNAメチル化転移酵素であるDNMT1の上昇についてin vitroとin vivoの両方のモデルで共通に見出してきた。また、in vitro実験系を用いて、これまでのMeHg曝露によるエピジェネティクス変化と、神経突起伸長との因果関係を検討したところ、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、ならびにDNAメチル化転移酵素であるDNMT阻害剤によって、MeHgによる神経突起伸長抑制の改善が認められた。本年度は、上記の結果を学術論文として発表し (Go et al., Archives of Toxicology, 2021)、低濃度MeHgによる神経突起伸長抑制を引き起こす候補遺伝子として、核内受容体であるNR4A1の遺伝子レベル、タンパクレベルでの発現減少を見出した。以上より、おおむね研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、NR4A1遺伝子プロモーター領域のエピゲノム解析、ならびにDNMT1、HDAC3、HDAC6の発現上昇メカニズムの解明とそれに伴うMeHgの標的分子の探索を引き続き行う。
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